203. ルマジャたちの行進

 ルマジャさんは倒した騎士をすべてタラトに運ばせるつもりのようだ。

 タラトも嫌とはいわず、ルマジャさんの指示通り騎士たちをひとりずつ繭に包んでいった。

 30分ほどで騎士たちの梱包作業も終わり、いよいよ出発だ。


「行くぞ。目指すは王城じゃ」


「王城ですか? でも、行くには貴族街の門を通り抜ける必要があるんじゃ……?」


「邪魔されればこやつらと同じになるだけじゃよ」


 うわ、なにそれ、完全に力押しだ。

 こっちが先に殴りかかられたんだから仕方がない……のかな?

 実際、貴族街の門でも制止されたけど、ルマジャさんは衛兵を脅して押し通った。

 うーん、こっちが悪者になった気分。

 貴族街を抜ければ王城まではすぐなんだけどね。


「止まれ! これ以上近づけば国王陛下への反逆行為と見なし即刻処刑する!」


 うわ、王宮側に兵士たちがずらっと待ち構えているよ。

 王宮へ続く門の前までぎっしりいるみたいだ。

 でも、ルマジャさんたちの相手じゃないし、どうしたものか。


「ふむ、押し通るか、弟子よ?」


「いえ、あの人数相手に大怪我をさせぬよう手加減するのは難しいかと」


「難儀じゃの。闇魔法で体力を吸い取ってしまってもいいが時間がかかるか」


「はい。しばらくは様子見で……」


 ルマジャさんとプラムさんがこれからのことを話しているとあちらの陣で動きがあった。

 兵士たちが倒れていった。

 ふたりはまだなにもしていないみたいだし、どうしたのだろう?


「……なんでしょうか、師匠」


「この波動……ゼナ様か?」


 ふたりが推測している間にも兵士は倒れ続けていき、最後のひとりまで倒れてしまった。

 すると、兵士たちの方から妖艶なドレスを身にまとった女性がやってくる。

 私も含めた冒険者は身構えるが、プラムさんが手で制した。

 味方、なのかな?


「お久しぶりです、プラム姫」


「姫と呼ばれるのは慣れていないのじゃがのう、ゼナ様。此度はどうしたのだ?」


「バスタラフ老から話を聞き、海を越えてはせ参じました。まさか戦闘状態になっていようとは思いもよりませんでしたが」


「この国の者どもも短気よの。儂はこのまま城に入るがどうする?」


「サザビー公王もご一緒のようです。私もお供しましょう」


「うむ。では、参ろう」


 どうやら兵士たちが倒れたのはこの人の能力だったみたい。

 通り抜けるときに倒れている兵士の様子を見てみたけど、眠っているだけのようだ。

 あの一瞬で相手から悟られずに眠らせることが出来るだなんてちょっと怖いかも。

 そういえば、ダーシェ公国の人たちって船とかで海を渡ってきた訳ではなく、転移魔法とかでやってきているんだよね?

 これって兵士も転移魔法を使って送り込まれたら一瞬で国が落ちるんじゃない?

 大丈夫なのかな、この国……。

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