202. ルマジャ・プラム出陣

 私たちが持ち帰ったのは呪玉であって宝物ではあり得ない。

 それを王家は『秘宝』と呼んで取り返そうとしてくる。

 これは怪しすぎるね。


「ふむ。呼び出しは妾ひとりか?」


「い、いえ。今回の討伐に参加した者たち全員を捕縛せよと命令が出ているそうです」


「ほう」


 あ、ルマジャさんから殺気が漏れ出してきた。

 プラムさんとサザビー様からも殺気が漏れている。

 かなり怖いんですけど……。


「なるほど。それは歓迎してやらねばなぁ」


「ルマジャ、独り占めは許さぬぞ」


「私にも残しておいてもらいたいものだが?」


「父上は国王たちを相手に出来るでしょう? 雑兵たちは儂らに任せよ」


「仕方があるまい。ここは譲ろう」


「……しかし、武器はどうしたものか。素手で殴りかかってもよいのじゃが」


「やめてください、師匠。ですが、師匠にあった武器もありませんね……」


「うむ。鞭とは贅沢を言わぬが魔剣程度はほしいところじゃ」


 鞭……あ、そうだ。

 女神様の鞭を一切使っていないんだっけ。

 これって他人に使わせることができるものなのかな?

 だめだったらだめだったときで渡してみよう。


「プラムさん、これ使えますか?」


「……ずいぶん真新しい鞭じゃが、お主の武器かえ?」


「私の師匠からもらった武器のひとつなんです。でも、私は使う機会がなくて」


「なるほど。では早速……む!?」


 プラムさんが魔力を注ぎ込んだんだと思うけど、鞭が黒く染まってしまった。

 持ち手のところだけ血のような赤色。

 ちょっと気持ち悪い。


「この武器は……本当に使ってもよかったのか?」


「はい。私は使わない武器ですから」


「わかった。ありがたく使わせてもらおうぞ。では行くか、ルマジャ」


「はい、師匠。冒険者たちも続け!」


 ルマジャさんとプラムさんを先頭にわたしたち冒険者とサザビー様はルマジャさんの屋敷を出ていく。

 屋敷の周りは沢山の騎士たちで包囲されていた。

 これだけの騎士がいるなら王都を守る戦力ももっとだせただろうに……。

 本当にこの国の王様たちの考えがわからない。


「ルマジャ! 観念してでてきたか!」


「観念とはなんのことじゃ? そもそも王家の秘宝とやらを持ち出した覚えはないのだが?」


「しらばっくれるな! お前が王家の秘宝を持ち出したと捕縛指令書には書かれている!」


「それしか証拠がないのか。では、まかり通るぞ」


「なに!? これだけの騎士を相手にするつもりか!」


「その程度の人間など頭数に入らんよ。では、押し通る」


 ルマジャさんが一瞬で準備の終わった魔法を騎士たちに向けて解き放った。

 すると、騎士たちは音もなく吹き飛ばされ、倒れ込んで動かなくなる。

 あれ、死んでないよね?


「その程度か? 妾相手に対魔法防御用の防具も持ち出させぬとは、飛んだ捨て駒よ」


「おのれ……相手は少数だ! 一斉にかかれ!」


 隊長らしき人の号令で穴の開いた場所を埋めた騎士たちが一斉に私たちへと殺到してくる。

 もっとも、それもルマジャさんとプラムさんには及ばず、魔法で弾き飛ばされたり鞭で吹き飛ばされたりしていた。

 うん、この国の騎士たち、弱すぎる。


「どうした、もう終わりか?」


「く、おのれ……魔術士隊、準備!」


「隊長!? 魔術士隊が既にやられております!」


「おのれ、どこのどいつだ!?」


「それが……蜘蛛のモンスターで」


 あ、タラトがいつの間にかあっちに。

 後方に待機していた魔術士隊を動けなくしていたのか。

 気の利く子だ。


「く……撤退する。総員、続け!」


「逃がしなどせぬよ」


「なに? 足が……体が、動かない……」


「闇魔法の一種じゃ。この国では研究もされていないじゃろうがな」


 やっぱりルマジャさんもプラムさんも強いや。

 タラトがいつの間にか魔術士隊を倒していた以外、全員ふたりだけで倒したんだもの。

 でも、この後はどうするんだろう。

 このまま王城に行くのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る