201. ダーシェ公国七大公爵バスタラフ
とりあえず、いつまでも寝室で話をしている訳にもいかないということで一旦応接間へ移動した。
すると、応接間にはいつの間にかお茶をすするお爺さんがいる。
この香り……緑茶だ。
「む。サザビーよ、プラム嬢はいたのかのう」
「いたぞ、バスタラフ爺。わざわざここまで転移で運んでもらい申し訳ない」
「なんのなんの。儂にとってもあの娘っ子はかわいい孫のようなものじゃからのう」
新しく現れたお爺さんはバスタラフさんというらしい。
サザビー様が親しく話しているということはダーシェ公国の人かな?
「ん? サザビー、お前の後ろにいる娘っ子は誰じゃ?」
「おお、こいつか。こやつはリリィ、プラムを救い出してくれた恩人だ」
「そうかそうか。儂の名はバスタラフ。これでもダーシェ公国七大公爵家のひとつに数えられているリッチ家の当主じゃよ」
「ということは貴族様……」
「ああ、ダーシェ公国の貴族にはあまりへりくだった態度は必要ない。居丈高になられても困るが、対等に接してくれれば十分よのう。儂も数千年生きてきたおかげで大抵のことでは腹も立たぬしの」
数千年……桁が違った。
私なんて16歳(女神様設定)なのに。
応接間の席に着いたらバスタラフ様直々に緑茶を煎れてくれた。
温かい緑茶はなんだか心が落ち着く。
この国の人はこの苦みに慣れておらず飲みにくいらしいが、私は平気だ。
なんなら個人輸入したいと言ったら大使館に手配してくれるそう。
なんともラッキーだね。
やがて着替えをすませたプラムさんがやってきて今回のことの顛末を話して聞かせた。
大抵のことでは腹を立てないと言っていたバスタラフ様も、これには怒り心頭な様子だ。
大丈夫かな……?
「バスタラフ老、そう慌てるでない。まだ確証のない話じゃ。本当だったとすればどこから異端懲罰官が入り込んだのかを徹底的に洗い出す必要があるが、いまのうちにやっておけるのはそれくらいじゃよ」
「むむむ……。数千年生きてきたがゲイズの邪教徒どもには煮え湯を飲まされてばかりじゃ。信仰をはき違え、死すら恐れなくなった者どもほど始末に負えない者もおらぬ。どうしてくれようか」
「バスタラフ爺、いまは国内の正常化が先だ。私はプラムが心配なのでしばらく残るが、バスタラフ爺は先に戻り指示を飛ばしてくれるか?」
「そうじゃな、それがよいか。事前に空挺部隊は配置しておいた。だが、こちらから仕掛けるなよ?」
「私もそこまで馬鹿ではない。あちらから仕掛けてきたときのための備えだ」
「ならばよい。では、儂は戻る。ああ、リリィ。これが今日の茶じゃ。開けてしまったので湿気る前に飲んでしまえよ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ。孫娘が増えたようで嬉しいのう。それではな」
バスタラフ様の周囲がゆがみ、その姿が見えなくなる。
これも転移魔法の一種なんだろうか。
私も覚えてみたいな。
覚えられるなら、だけど。
バスタラフ様が帰った後、ルマジャさんが今後考えられる王国の行動をまとめてみた。
中にはとても信じられないものがあったけど、騎士団の無能っぷりを考えるとない話ではないかも……。
今回の作戦に参加してもらった他の冒険者さんたちも集まって改めて話をしたけど、ルマジャさんの意見を否定する人はいなかった。
この国の王様ってそこまで無能なんだ。
しばらくして外の方が騒がしくなり、応接間に使用人が駆け込んできた。
よほどのことがあった……と言うか、ルマジャさんの言っていたシナリオが当たったんだね。
「ルマジャ様! 王国騎士団がルマジャ様を捕縛に来たと! 罪状は王家の秘宝を奪った罪だそうです!」
王家の秘宝ときたか……。
これで王国は黒かな。
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