134. 実車を見にいこう
オプション満載で2億ルビスの魔道車。
さすがにそんな物は買えないなぁ。
でも、わざわざアリゼさんがこの話を持って来たということは買う価値があるんだろうし、もう少しだけ話を聞いてみよう。
「さて、仕様上のすごさはご理解いただけたと思います。次は実車をご覧いただこうかと」
「わかりました。ナサレノさん、よろしくお願いします」
「ほっほっほ。こちらですぞ」
ナサレノさんに案内されてやってきたのは、店舗の奥にある駐車スペース。
ここには何台もの魔道車が停めてある。
ナサレノさんによると、どれも納車待ちの魔道車だそうだ。
ヴァードモイでも上流階級は魔道車を求める傾向が近年顕著らしい。
ナサレノさんのお店はヴァードモイだけでなく近郊の依頼もすべて引き受けているから、納車待ちの魔道車が多いらしいけどね。
さて、お目当ての魔道車は……。
「あれですな。あの、一番大きな魔道車が私どもの目的の魔道車、『ルミテグランドウィング』です」
ああ、やっぱりあれかぁ。
ほかの魔道車に比べて一回りどころか二回り以上大きいものね。
車体そのものは若草色に塗られており、高いところほど薄い色、低いところほど濃い色で塗られているようだ。
車体は三つに分かれており、一番前の車両が搭乗者用の車両、残りふたつはコンテナになっている。
三つに分かれているのも理由があり、小回りをきかせるためのようだ。
それぞれが独立して駆動部を持つのでZ状に折れ曲がる心配は少ないらしい。
最前部の搭乗車両は全部で4列構成の9人乗り。
前3列はドアに寄せた独立シートがふたつずつ、最後尾の四列目だけ3人掛けのシートになっている。
車内はウォークスルーになっており、止まっているときであれば行き来が出来そう。
また、車両内部に小型冷蔵庫が2台用意してあり、飲み物を冷やしておくことも出来るようだ。
さすがは高級車、至れり尽くせりだね。
後部車両のコンテナ車は中列車が左右の壁が開くように、後列車が後方の壁が開くようになっている。
どちらの車両も冷蔵保存が出来るようになっていて、生の魚介類であっても4日程度は保つそうだ。
冷凍車両としても利用することが出来るようで、その場合は魔力を多く消費するみたい。
これだけの大型コンテナ全体を冷凍車両として扱うなら当然かな。
これだけ大きいと車庫入れや車庫出しが大変じゃないかと思って聞いてみたけど、そこは自動運転の範疇でなんとかなるらしい。
周囲の障害物などを読み取って3つの車両がぶつからないように車庫入れしてくれるそうだ。
本当に便利機能搭載だね。
それから、オプションじゃないので話題に出てこなかったんだけど、この車にはカーナビみたいな地図も付いているようだ。
GPSシステムもなしにどうやってナビゲーションしているのかは不明だけど、街中ではランドマークになりそうな建造物に大手の商会などをマッピングしている。
街の外では大体の地名と地形が表示されるらしい。
もちろん、人がいける範囲でしか表示されず、砂漠などでは黒く塗りつぶされた部分も珍しくないそうだが。
「……本当に至れり尽くせりですね」
「はい。当店自慢の品です」
「でも、2億ルビスなんですよね? さすがにそこまでは……」
「それなんですが……商業ギルドからの借り入れも含め1億2000万ルビスまで支払っていただけるのであればお譲りいたします。いかがでしょう?」
え?
いきなり8000万ルビスも値引きなの?
この魔道車大丈夫?
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