133. カタログスペック
私はナサレノさんから今回売ってくれるという魔道車のカタログを見せてもらうことにした。
なになに、最高速度は……ダイゴセブンティーンの2倍!?
積載容量も前の世界基準で10t以上あるし、なんなのこの化け物は!?
思わずカタログから目を背け、ナサレノさんを見てしまう。
ナサレノさんは私の様子をうかがうようにこちらをじっと見ていた。
いや、これは誰でも驚くから。
「いかがでしょう。最新式魔道車の感想は?」
「いかがでしょう、というか……モンスターマシン?」
「ほっほっほ。最新技術の粋を集めて作られた最高傑作ですからな。それで燃費はダイゴセブンティーンとほぼ同等なのですから驚きです」
いや、ダイゴセブンティーンってこの3倍から4倍は積載量があるから……。
そう考えると燃費はあまりよくないかもしれない。
でも、このスピードは目を見張る物がある。
スピードだけを考えれば、だが。
「あの、こんな速度を出して街道を移動したら歩行者や馬車をはねてしまうのでは?」
「なんのなんの。街道を移動しなければよいのですよ」
「街道を移動しなければいい?」
「その魔道車の基本軌道方式は全輪クローラー方式です。平野部はもちろん、荒野や砂漠でもお構いなしに走り抜けることが出来ます。もちろん、エアコン搭載ですから中は快適ですぞ」
エアコン搭載なのはカタログで見たけど、この魔道車も全輪クローラー方式なんだ……。
悪路走破性が高いのはダイゴセブンティーンでよく知ってる。
多少の岩場なら気にせず走り抜けていたからね。
揺れも軽減されていたし、すごい技術だった。
それでも結構揺れたが。
「でも、この魔道車、結構高いのでは?」
「高いですね。オプション無しで1億ルビスです」
うわ、1億ルビスか……。
買えない額じゃないけど、あまり必要性がなぁ……。
「今回の魔道車は、それにオプションが付いております。自動運転、冷蔵保管庫、車内座席拡張、対物理・魔法コーティング、非乗車時結界ロック、キャンプコテージなどです」
うーん、いっぱい付いているなぁ。
わかりやすい自動運転、冷蔵保管庫、車内座席拡張はおいておき、ほかのオプションを説明してもらった。
対物理・魔法コーティングはその名前の通り、攻撃に対して非常に頑丈になる処理を施していることらしい。
普通にしていても効果を発揮するため、傷もつきにくいんだとか。
非乗車時結界ロックは誰も乗っていない間、周囲に結界を張って他人が近寄るのを防止する機能。
これによって道ばたなどに放置していても乗り逃げされる心配がなくなると太鼓判を押された。
キャンプコテージは野営をする際、車体の一部を変形させてベッドを作る機能だ。
非乗車時結界ロックと組み合わせると、不寝番もいらなくなると言われた。
確かに、ひとりで旅をするなら非常に便利な機能である。
問題はお値段だよねぇ……。
「それで、このオプションをすべてつけた場合のお値段っていくらになるんですか?」
「2億ルビスですな。やはり高値になります」
やっぱり。
さすがに2億ルビスは払えないなぁ。
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