132. 車を見にいこう
アリゼさんが言うには早めに実物を見学して購入しておいた方がいいということだ。
なので、お店はタニアさんたちに任せてアリゼさんの案内のもとカーショップへと足を運ぶ。
カーショップは街の外れの方にあるみたいで乗合馬車を使い移動する。
たどり着いたカーショップはかなり大きな規模の店だった。
「アリゼさん、本当にこのお店なんですか?」
「はい、そうですよ。このお店のオーナー直々に商業ギルドへ話を持って来ています。詳しくは中で聞いてみましょう」
アリゼさんはなんの気後れもなくお店の中に入っていく。
私たちもそれに続くけど、私はなんとなく場違いな気がするんだよなぁ。
魔道車ってこの世界でも高級品だし。
アリゼさんが一言二言店員と話をすると、その店員はすぐに立ち去り代わりに恰幅のいいお爺さんがやってきた。
あの人がこのお店のオーナーだろうか?
私も話を聞いてみよう。
「おお、アリゼ様。早速来てくださいましたか」
「はい。お邪魔します、ナサレノ様」
「それで、あの車をお買い上げくださるのはどなたですかな?」
「まあ、落ち着いて。まだ買うとは決まってません。まずは話を通してからです」
「おお、それもそうですな。で、商談相手は?」
「商談相手は私の後ろにいるリリィ様です。私が商業ギルドで個人担当をしている商人ですよ」
「リリィ様……なるほど。ようこそ、リリィ様。私がこのカーショップのオーナー、ナサレノでございます」
「初めまして、リリィです。よろしくお願いします」
「立ち話もなんです。商談室へ向かいましょう」
私たちはナサレノさんに導かれるまま商談室へと入った。
この部屋、質素だけどものすごく趣がある。
決して安くはない家具で構成されているんだろうな。
「ささ、どうぞおかけください」
「では、失礼して……」
椅子も木製だけどしっかりしている。
革で補強されているし、座ってもお尻や背中が痛くならない。
すごく上等な椅子だ。
やっぱりこういうところにお金をかけているんだなぁ。
「それで、服飾士で布商人のリリィ様にあの車をお勧めする理由はなぜでございましょうか、アリゼ様?」
う、私が布商人だってこともばれてる。
知っているのは一部の人間だけのはずなのにどうやって調べたんだろう?
アリゼさんが話すはずはないし、やっぱり独自のルートがあるんだろうか。
「ナサレノ様はリリィ様が布商人だとご存じですから。あの車を持っていてもおかしくないだろうと判断し買いにまいりました」
「しかし、あの車は冒険者などが素材を運搬するためのコンテナも付いた車ですぞ。ただの布商人には……」
「もちろん、ここでは話せない理由もあります。リリィ様にとって、あの車は商売上ありがたい物なんですよ」
「ふむ……私も急ぎで売り先を探していますが、不要とされている方にお売りするのは商売人として気が引けます。まずはカタログでスペックを確認していただくとしましょう」
私抜きで話が進んでいくけど、今回の車のカタログを見せてもらえることになったようだ。
どんな車かは聞いてないし、じっくりと確認させてもらおう。
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