第二章 ルミテグランドウィング
131. 車、買いませんか?
街道が開通されるまでの間、人の往来が減るということで私のお店も客足が減っている。
私のお店は新品の服を売っているお店の中でも、わりとリーズナブルなお値段でやっている店だ。
布地の色だけで色合いを決め、時々万能染色剤で色を変えるくらいしかしていないため、ほかの店でやっているような個々のお店で布を染め上げる作業をしていない。
それを直に値段へと反映させているため安いのだ。
あと、魔法裁縫のため、同じ服を作るだけなら大量生産が利く。
前の世界の量販店のように同じ服を大量販売しているわけ。
そのおかげで、客足はそれなりにあり、街でも私の服を着ている人が時々見かけられた。
でも、いまは冬の時期でみんな財布の紐が硬くなる。
新しい収入源がある人は限られてくるからね。
それこそ、旅人相手の宿屋や食堂、冒険者向けの鍛冶屋などしかあまり儲けは出ていないんじゃないだろうか。
そんなわけで客足は減っているんだけど、お客様が毎日何組かはいる。
下着を求めてやってくるお客様だ。
下着は古着屋で買いたくないし、私のお店で売っている下着はほかのお店とは一線を画している。
それでいて値段もそこまで高くない。
もちろん、フリルとかをふんだんに使ったような商品は高いわけだけど、そちらはこういう物もありますよ的な商品見本だ。
一度も売れた試しはない。
ともかく、私のお店の下着、ブラジャーとショーツを求めてやってくるお客様は必ずいるわけだ。
そうなると冬でもお店を閉めているわけにはいかない。
お店は魔道式空調が効いているので寒くないんだけど、定期的に魔石を補充するか魔力を補充するかしないといけないからなぁ。
経費も馬鹿にならないんだよね。
まあ、普段は魔力を使うから誤差だけど。
そんなことを考えながら店番をしているとアリゼさんがやってきた。
今日は商業ギルドの使いではなく私用らしい。
ただ、半分は商業ギルドの使いだと言っている。
一体どんな用件だろう?
「リリィ様、この家の横には駐車スペースがありますよね?」
「ありますね。侯爵様がこのお店にご厚意でプレゼントしてくれた物です」
「……車、買いませんか?」
……ずいぶんと唐突だね。
話を聞くと、割のいい魔道車がいま商業ギルドに持ち込まれていて売り先を探しているそうだ。
「性能としては申し分ありません。ただ、値段が高くどの商人も二の足を踏んでいるのです。リリィ様なら多少高くとも買えますよね?」
「アリゼさんなら私の懐事情を知っているから問題なく買えるんでしょうけど……その魔道車ってそんなにいいものなんですか?」
「売主がこれでもかというほど値引きをしています。これを逃す手はありません」
魔道車かぁ。
私にはまだ早いって感じていたんだけど、アリゼさんが勧めるということはこの先あった方がいいってことだよね。
免許、取れるかなぁ?
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