130. 街道の安全
私たちがドリーブズゴーレムを倒してから一週間が経過した。
冒険者ギルドは、ドリーブズゴーレムの迎撃に全力を注いでいるようだ。
可能な範囲での人数を集めて毎日大量のドリーブズゴーレムを狩っているらしい。
ただ、ドリーブズゴーレムの行動範囲内ではのんびり野営が出来ないので、あまり効率は上がっていないみたい。
私たちが使ったように魔道車を使うことはなかなか出来ないからね。
それでも、可能な範囲で魔道車を使い、冒険者を送迎しているようだ。
というわけで、ヴァードモイ側のドリーブズゴーレムはなんとか倒せている。
問題はヴァードモイの反対側にある王都なんだよね……。
「じゃあ、王都側ではなにも対策をしていないんですか?」
「対策をしていないというか、既に手遅れというか……」
私のお店にやってきたメラニーさんによると、ドリーブズゴーレムは王都側でも頻繁に目撃されるようになっていたみたいだ。
問題は王都の対応で、ドリーブズゴーレムを積極的に倒さず放置することにしたらしい。
結果として王都とヴァードモイの間にある街道は実質的な閉鎖状態、流通が途絶えた。
王都からすればひとつの街道が使えなくなっただけだけど、ヴァードモイからすると王都との物流が途絶えた状態になる。
これは非常に好ましくない。
特に、食品のような腐る品物を扱っている商人たちには大打撃だ。
王都の冒険者ギルドにも連絡を取ったらしいが、自分たちだけで対処できる量をはるかに超えているらしく対応できないと返事が来たみたい。
結論としては、お手上げってことだね。
「それって冒険者ギルドの手落ちにならないんですか?」
「冒険者ギルドの手落ちでもあるんですが……それ以上に王都の防衛にあたる騎士団の手落ちになるんですよ。本来、王都に直接的な被害が発生しそうな場合、モンスター退治にあたるのは王都防衛のための騎士団ですから」
「つまり、冒険者ギルドに落ち度はないと?」
「いやぁ、落ち度はあるんですけど、普通はそんな状況になる前に騎士団から警告が入るんですよね。でも、今回はそれもなく大量発生を許してしまった。もう街道を封鎖するくらいしか手がないんですよ」
メラニーさんを責めても仕方がないんだけど、そういうことらしい。
ちなみに途中にある村の住民は避難を終えており、人的被害はなさそうだという話。
でも、家畜までは避難できなかったのでどの程度被害が出るかわからないし、場合によっては廃村もあり得る。
結構厳しい状況のようだ。
ちなみに、王都から見える範囲まで出てきたドリーブズゴーレムは雷属性の魔法で爆破されているとのこと。
王都の防衛までは手を抜いていないらしい。
メラニーさんの推測では、森の中で戦って死傷者を出したくなかったんだろうと読んでいるようだ。
まったく、ひどい話である。
それで今後はどうするかといえば、ヴァードモイ側はこのままドリーブズゴーレム狩りを続け、途中まででもいいので街道の安全を確保しておく予定らしい。
ドリーブズゴーレムの核も買い取りが決まり魔石は高額で買い取られているので、冒険者にとっては稼ぎ時なのだろう。
無理をした冒険者が大怪我をしたり死亡したりしている例があるらしいが、そこまで冒険者ギルドで面倒を見るつもりはないし面倒を見るいわれもない。
あと一カ月ほどでドリーブズゴーレムは自然消滅する時期のため、それまでのボーナスタイムなんだろう。
私たちも一週間に一度、アリゼさんに魔道車を出してもらい狩りに行くことになっているし、他人のことは言えないんだけどね。
まあ、オーガの代わりにある程度安全を確保出来るモンスターということでアリゼさんも納得している。
魔石の質もいいからスパイダーシルクも量産できているしね。
スパイダーシルクは腐らないから王都方面への輸出を一時止めても問題ないし、港から海の向こうの国との交易品としても役立っているそうだ。
ともかく、私たちも注意しながらドリーブズゴーレムの駆除に協力しよう。
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