125. しばらくの討伐目標決定

「ドリーブズゴーレム、ですか?」


 冬が始まり数日後、アリゼさんがやってきて私に話してくれたのは、当面の間討伐対象にするといいだろうというモンスターのことだった。

 その名前は『ドリーブズゴーレム』、知らない名だ。

 ケウコさんたちは知っているかな?


「あの、『山猫の爪』のみんなは知ってますか?」


「いえ、知らないモンスターです」


「名前も聞いたことがない」


 あれ?

 赤冒険者の『山猫の爪』ですら知らないモンスターって相当マイナーなモンスターなのでは?

 どこでそんな情報を仕入れてきたんだろう。


「まあ、知らないのも無理がありません。このモンスターは秋の終わりから冬の始まりにだけ発生し、人里に下りてくることは稀らしいですから」


「そうなんですか?」


「メラニーさんにも確認しましたがそうらしいです。森の奥深くで枯れ枝と枯れ葉をベースとして発生するゴーレムで、森の周囲に出ていくことはないそうですから、そもそも目撃例が森の中まで入らないとありません。それに、その凶暴性からあまり無闇に手を出すことをよしとされないモンスターでもあります」


 あまり手を出さない方がいいモンスターってどういうことなんだろう?

 それについてもアリゼさんは調べてきてくれていたようで私たちに教えてくれた。


「このモンスター、ゴーレムなのに打撃がほとんど効かず、もちろん斬撃も刺突も有効打になりません。そして、魔法も火属性の魔法を打ち込むと激しく燃え上がり、抱きついてきて自爆します」


 なにそれ、凶悪すぎるんだけど。


 どうもこのモンスター、自衛意識というか縄張り意識のかたまりみたいなモンスターらしく、近づかなければ襲われないらしい。

 その代わり、近づくと最初は体の一部を飛ばして牽制してくるだけだが、最終的には自身の体を燃やしての自爆攻撃になるそうだ。

 毎年多少の被害は出ているものの、基本的に山林の奥にしか発生せず、こちらから仕掛けない限り安全なモンスターのため討伐対象にはなっていないみたい。

 じゃあ、なんでそんなモンスターの話をいましているのかというと、今年は例年と違う事情が生まれているようなのだ。

 どういうことかというと、普通は森の奥深くまで行かないと存在しないはずのドリーブズゴーレムが森の割と浅いところに現れ、しかもあちらから積極的に襲ってくるらしい。

 それも決まった森でしかその現象は観測されておらず、冒険者ギルドでも情報を集めている最中だという。


「それで、その現象が起こっているのがこの森なんですが……」


「……王都に面した森か」


「はい。まだ王都側には大きな影響が出ていないと報告されているみたいです。ですが、現在の状況を考えると、いずれは王都の近郊でもドリーブズゴーレムが現れるようになるでしょう」


 うーん、思っていたより緊急度が高いみたい。

 でも、これを私たちにどうやって片付けろと?


「ドリーブズゴーレムですが、雷属性の魔法を当てるとその場で爆発します。また、氷属性の魔法で凍りづけにすると物理攻撃もよく通るようになります。リリィ様を積極的に戦わせたくはないのですが、魔法使いとして参戦してほしいのです」


 ああ、アリゼさんは素材集めの旅で一緒だったこともあって私が優れた魔法使いだってことを知っているか。

 となると、トモアさんが遠くのゴーレムを雷属性の魔法で爆破、私は近くのゴーレムを氷属性の魔法で冷凍って感じかな。


 詳しく聞くとヴァードモイから歩きで半日程度の森にも既にドリーブズゴーレムが確認されているそうだ。

 移動の足にはアリゼさんが商業ギルドの魔道車を用意し、運転もしてくれるそうだから行き帰りの心配はしなくていいという。

 とにかく、商業ギルドとして準備は出来ているので明日からでも数を減らしてほしいそうだ。

 危険度はまだ未知数だけど、お得意様の商業ギルドからの依頼でもあるし、一肌脱ぎますか。

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