7. テイマーと冒険者登録

「さて、リリィさん、こっちだよ」


 解体場を抜け、さらに奥にある通路へと私は案内される。

 その先にある扉の向こうから、多くの人たちの声が聞こえてきていた。

 マイスさんが扉を開けると、これぞ冒険者ギルドという光景が広がっていたのだ。

 受付にはたくさんの人たちが並んでおり、それ以外にも大勢の武器や鎧を着けた人たちが辺りをうかがっている。

 ギルドには酒場か食事処が併設されているようで、そこからも歓声が聞こえてきていた。


「リリィさんはこういった場所は初めてかね?」


「はい。噂には聞いていましたが初めてです」


「そうか。まあ、そのうち慣れるよ。まずはテイマーギルドの登録から済ませてしまおうか」


 マイスさんは冒険者たちが詰めかけているカウンターから独立した場所にあるカウンターへと入っていった。

 私にも来るように手招きされているのでそちらに行ってみた。

 だけど、こちらの窓口に来る人は誰もいない。

 むしろテイマーギルドの方に向かう私とタラトを物珍しそうに見ている人がほとんどだ。

 この街ではそんなにテイマーがいないんだろうか?


「よく来たね。ここがテイマーギルドの受付だ。……と言っても、所属している者がほぼいないので閑古鳥が鳴いているがね」


「ははは……」


「まあ、そんなことより会員登録だ。身分証を出してほしい」


 私はマイスさんに言われるまま身分証を出し彼に手渡す。

 すると、マイスさんは手元にあった魔道具に身分証をくぐらせて私に返してくれた。

 手元に帰ってきた身分証には『所属:テイマーギルド』と書いてある。

 ……想像以上にすんなりと登録が終わってしまった。


「さて、登録はこれで完了だ。この腕輪を持っていきなさい」


「これは?」


「従魔が付ける従魔証と対になっている従魔士の腕輪だ。これがあればテイマーとしての身分が保障される。わかりやすくテイマーだと証明するための物だと考えてくれればいい」


「わかりました」


 私は従魔士の腕輪を身につける。

 すると、従魔士の腕輪に付いていた宝石の色が変わり、タラトと同じ白色となった。

 これは従魔と従魔士で同じ色となるらしく、普通のことなんだとか。


 テイマーギルドの活動内容を聞いたけど簡単な説明だけで終わってしまった。

 まず、テイマーギルドにはランクがない。

 これはテイムしているモンスターによって得手不得手がはっきり分かれてしまうのでランクわけの意味がないそうだ。

 戦うことに特化したモンスターと移動手段として使われるモンスターでは比較しても意味がないからね。

 次にテイマーギルド専用の依頼というのも存在するが、これらは基本的に指名依頼となるらしい。

 こちらもテイマーによる得意分野の差から誰でも受けてしまえる依頼はほぼなく、誰でも受けられる依頼は基本的に冒険者ギルドに回すそうだ。

 それ以外の規則については、従魔が増えたり減ったりしたときは必ず申請が必要らしい。

 従魔がすべていなくなってもテイマーギルドの所属は消えないので安心だそうだ。


「冒険者ギルドの窓口も空いてきたし、冒険者登録をしてくるといい」


「はい、ありがとうございました」


「うむ。わからないことがあればまた聞きに来なさい。ああ、あと、従魔連れで泊まれる宿屋は限られている。この街では『大鷲の巣』という店がおすすめだ」


「わかりました。そこに行ってみますね」


「ああ、気をつけてな」


 テイマーギルドの登録は終わった。

 次は冒険者ギルドの登録だ。

 こちらも新しい冒険者の登録が混雑するのは午前中だそうで待たされずに完了した。

 冒険者ギルドの方はギルド規約が細かく決まっていていろいろと説明することが多いらしい。

 でも、もう夕方なので、詳しい説明は明日解体依頼を行っている物の引き取りを来るときにするということになった。

 さて、それじゃあ宿を取りに向かおう。

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