第二章 都市ネイスト
5. ネイスト入街
ネイストという街まで着いたけど、街に入るのは少し待たされることになった。
なんでも、こちら側の街道はタラトに倒されたヴェノムリザードによって一時封鎖されており出入り禁止だったそうだ。
そして、そんなタラトを従魔として連れてきた私も身元不明ということで、すぐに街に入れるわけにもいかず、テイマーギルドというところから本当にタラトがテイムされていて害はないかを調べる人を派遣してもらうとのこと。
まあ、いきなり私みたいな人が現れたら怪しまれるよね。
しばらく待っていると準備が出来たのか跳ね橋が降ろされ、数名の兵士と彼らに護衛された老人がやってきた。
このお爺さんがテイマーギルドの人かな?
「お待たせしましたお嬢さん。テイマーギルド職員でギルドマスターのマイスといいます。お見知りおきを」
ギルドマスター!?
そんな偉い人が出てきてもいいの?
「ああ、この街には私しかテイマーギルドの職員がいないのでご心配なく。そして、そちらがテイムされたラージシルクスパイダーですか……」
「あ、はい。ラージシルクスパイダーのタラトといいます。私は……」
あ、この世界での名前を考えてなかった。
ユリじゃおかしいかもしれないし、『ミズガルズライフ』で名乗っていた『リリィ』と名乗ろう。
「私はリリィです」
「リリィ様ですね。……ふむ、額に契約紋もありますし、これだけ人が近づいても暴れる様子がない。従魔契約は成り立っていると考えて問題ないでしょう」
「じゃあ、信じてもらえますか?」
「はい。テイマーギルドのメンバーとして登録いたします。登録にはこの街の支部にある魔道具を使う必要があるのですが、身分証の出し方はわかりますか?」
「はい、それは師匠から習っています」
この世界の身分証って不思議なもので個人の魂の中にあるらしい。
なので、自分が出したいと思えば出てくるし、しまいたいと思えば消える。
あと、一定以上離れると勝手に消えるから盗まれる心配もなし。
ただ、賞罰の履歴も自動的に残るから悪いことは出来ないんだけどね。
「では、テイマーギルドのテイムモンスターであることを示す従魔証を渡しましょう。この子でしたら……前脚に付ける腕輪型か首輪型かのどちらがいいでしょう?」
腕輪か首輪か。
タラトに確認したら腕輪がいいって返事が来た。
首輪だと頭が動かしにくいし、地面すれすれの位置に首があるからこすれても嫌らしい。
それをマイスさんに伝えると、腕輪を取り出してくれた。
腕輪をタラトの右前脚にはめると腕輪に付いていた宝石が鮮やかな白色になる。
これで従魔登録完了らしい。
「それではお嬢さん。テイマーギルドのある冒険者ギルドまで参りましょうか」
冒険者ギルド!
異世界物のど定番だね!
私も病室で暇なときに異世界転生や異世界転移などの小説を読んでいた。
だから、ちょっとだけ憧れがあったかも。
兵士さんたちとはここでお別れ。
マイスさんがタラトを正式に従魔と認めたことで、とりあえず危険はないとしたらしい。
ちなみに、タラトが運んできていたモンスターは再度繭玉にされてタラトが引きずっている。
マイスさんによれば冒険者ギルドで解体もしてくれるそうだ。
手数料はかかるけど、素材を売ることで儲けになるらしい。
女神様の路銀はあるけど、お金に余裕があったほうがいいに決まっているからね。
さて、冒険者ギルドはどんなところなんだろう。
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