4. タラトはものすごく強いらしいです
タラトを仲間に加え街へと再出発しようとすると、タラトに袖を引っ張られた。
お尻で森の奥の方を指し示しているので、ひょっとするとタラトなりに持っていきたいものがあるのかもしれない。
それならば、寄り道するしかないでしょう。
「うわぁ……でっかい繭玉……」
タラトに案内されてやってきたのはタラトの家。
つまり蜘蛛の巣だね。
そこには大小様々な繭玉がはりついていた。
タラトはそれらをひとつずつ地面へと下ろし始め、巣も消していたよ。
そして、繭玉を改めてお尻から出した糸で絡め取り引きずるようにすると出発準備が整ったみたい。
タラトが先頭になって歩き始めたので、私もそのあとに続いて行く。
先ほどの道の方へ戻ると、私が来た方の反対側へとタラトは足を向けた。
この子、なにげに知能が高いのかもしれない。
念話で私と会話出来るし、いろいろ出来るのかも。
それにしても魔物と遭遇しないなぁ。
それどころか魔物の気配すら感じられない。
タラトがこちらを見ている気配は感じられたけど、それ以外の気配はないんだよね。
どういうことなんだろう?
タラトはそれなりに速いペースで歩いていくし。
そのまま街道までたどり着き、森を出ることに成功した。
街道に着いてから後ろを振り返ると、もう道はなくなっている。
あの小屋にはもう戻れないんだね。
3週間とはいえお世話になっていたからちょっと愛着が湧いていたのかも。
そんな気分を慰めるようにタラトが頭をなでてくれた。
もうそんな歳じゃないんだけどな。
ともかく、街道に出たし、ここから東に進めば街へとたどり着くはず。
私はリュックから携帯食料を取り出し、食べながらタラトの後に続き街を目指した。
でも、街道ではまったく他の人とすれ違わないのはなんでだろう?
結構大きな街道だから他の人とすれ違ってもおかしくはないんだけど。
タラトの姿を見て隠れるにしても、平坦な道だから、隠れる前に私も姿を確認出来るはず。
なにかあったのかな?
結局、他の人には会わないまま壁が見えてきた。
あそこが目的地の『ネイスト』っていう街だね。
壁には立派な門が付いているし、魔物がおそいかかってきてもある程度は耐えられそう。
でも、跳ね橋式になっている門がいまは閉ざされている。
一体なにがあったんだろう。
「そこの少女、止まれ!」
門のそばまで来たら上から鋭い声が投げかけられた。
門を守る兵士からかな?
「お前、どこからやってきた!」
「ええと、この街道の先です。お師匠様とふたり、森の中で暮らしていたのですが、お師匠様が亡くなり人里まで下りてきました」
「師匠? お前が連れているモンスターはラージシルクスパイダーではないのか?」
あ、この子は『ラージシルクスパイダー』で種類なんだ。
それからこの世界では魔物のことをモンスターって呼ぶんだね。
覚えておこう。
「ええと、この子はここに来る途中でテイムしたモンスターです。害はありません」
「……確かに大人しくしているな。それで、その後ろの繭玉はなんだ?」
「私もちょっとよくわかりません。この子が街に行く前に巣から持ち出した物なので……」
「巣から持ち出した? それほど大きな繭玉をか?」
「はい。中身は私も確認していません」
「……わかった。中身を出すように命じてもらえるか?」
「はい。タラト、繭玉の中身を出して」
『うん』
タラトはいままで引きずって来た繭玉の中身を開放した。
その中にはたくさんのモンスターが詰まっていたみたい。
緑色の人型のやつは定番のゴブリンかな?
あと角のある兎や狼なんかもある。
一番大きな繭玉に入っていたのは、毒々しい紫色のウロコに覆われたトカゲ。
なんだか見ているだけで気持ち悪い……。
「な!? ヴェノムリザード!?」
「ヴェノムリザードがラージシルクスパイダーに倒されていたのか!」
「道理でどこを探しても見つからないわけだ」
このトカゲってヴェノムリザードっていうんだ。
それよりもこれを探していたっていうことなんだけど、なにがあったのかな?
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