2. 新しい旅路の始まり

 私が目覚めてから3週間はこの世界の知識と生きていくための力を身につける時間に使った。

 3週間といってもこの世界基準の3週間であり18日間だ。

 この世界では1週間が6日間でそれぞれ『火』『水』『風』『土』『光』『闇』と曜日が呼ばれているらしい。

 一般的なお休みは闇曜日。

 そして1カ月は5週間なので30日である。

 女神様は私に懐中時計も用意してくれていて、これを見れば今日が何月何日何曜日かわかる優れものだ。

 でも、動力はどうなっているんだろう?


 この世界の知識としては、この国の通貨単位が『ルビス』であることが示されていた。

 ほかの国では別の通貨が使われているらしい。

 また、この世界にはマナと呼ばれる成分がどこにでも存在し、これを用いて魔法などが発動するようだ。

 うーん、ファンタジーのど定番。

 あと、スキルもあるらしいがなんでも調べられる鑑定スキルやアイテムボックスにストレージ、レベル、ステータスはない。

 でも、道具にかかっている付与を調べる『鑑定ルーペ』は売っているそうだ。

 スキルがある理由は、『スキルクリスタル』と呼ばれるものがあるそうで、これを使うとスキルクリスタルに応じたスキルを身につけることが出来るそうだ。

 ただし、一回限りの使い捨てなのでとても高価だという。

 どんなメジャーなスキルのスキルクリスタルでも、貴族の子供に使わせる目的で買い占められるため一般人で手に入れる機会はまずないらしい。


 でも、私にはいくつかのスキルクリスタルを女神様が用意してくれていた。

 各属性魔法と生活魔法に命魔法、付与魔法、魔法紡織と魔法裁縫だ。

 命魔法とは回復魔法の総称らしい。

 魔法紡織と魔法裁縫は魔法を使って糸や布、服を作る技術である。

 これは私が『ミズガルズライフ』で服飾師として生活していたからこの世界でもやりたいんじゃないかと特別に用意してくれていたようだ。


 そのほか小屋にあった物は、私の着替えが入っていたかなり大きなリュックにいろいろな種類の装備、各種生活雑貨、約一カ月分の食料、当面の生活費であろう資金5万ルビス、それに先ほども出てきたこの世界の知識についてなどを書いた本がある本棚だ。

 武器は私が思いつきそうな物は全部置いてあった。

 剣や槍みたいなメジャーなものから鞭みたいな本当に使えるのか怪しいものまですべてだ。

 一通り扱ってみたけど、私は片手で使える長さの槍をメインに左手には盾、サブ武器に短剣と鞭を選んでみた。

 メインと短剣は真面目に選んだけど、鞭はほとんど趣味だ。

『ミズガルズライフ』で使っていたから多少扱えるので持っていくことに決めた。

 これらの武器と魔法を使っての対魔物戦も行ったよ。

 解体もしてみたけど、あまり上手くはいかなかったな。


 先ほども述べた通り、私はこの小屋で3週間過ごした。

 そろそろ人里に向けて出発しようと思う。

 女神様の手紙には続きがあって、この小屋を出発したら小屋にはもう戻れないから持ち出す物は慎重に選べと書かれていた。

 なので、持ち出す物は慎重に選ぶ……つもりだけど、装備以外は結構持ち出せるんだよね。

 持ち運ぶ手段は当然女神様がくれたリュックになるんだけど、これがかなり大きめの登山用リュックみたいな構造になっていて容量がとにかく多い。

 さらに、このリュック、どうにも見た目の容量以上に物が入るみたいなんだよね。

 試しにこの小屋にあった本棚の本を片っ端から詰めてみたんだけど、全部入ったし。

 薄い物もあったけど辞典並みの厚さの本もあったのに全部入る。

 その状態から食器などを詰めても全部入った。

 水筒は横のポケットに挿したけど、それ以外は全部袋の中だ。

 ちなみに、この中には既にテントなどの旅用品も一式入っている。

 私は見たことがないけど、地球にあったワンタッチ式の簡単設営式テントだ。

 うん、女神様もずいぶんと奮発してくれたんじゃないかな。

 さすがに武器を全部入れるスペースはなかったので、魔力を増幅してくれる杖だけ入れて持っていくことにした。


 こうして、保存出来ない食品類と武器以外のほぼすべてをリュックの中に詰め込んで私は旅に出ることにした。

 行く先はもっとも近くにある街『ネイスト』だ。

 ここで、本からでは得られなかった知識を調べることにしよう。

 この先の人生、どんなことが待ち構えているかわからないけど、悔いがないよう精一杯頑張ろう。

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