第7話「謎の手紙」

四月某日。俺・天野 恋は…

「あたしの頼みを聞いてくれ!」

ヤンキー少女につかまっていた。



下駄箱の前で天野 恋は固まっていた。

「恋恋、おはよう!愛ちゃんは?」

ウザ友・美波 生が話しかけてきた。

普段なら「愛は中等部にいるって毎日言ってんだろ!?何回このくだりやるんだよ!」と言うところだが珍しく無言だ。

美波は不思議そうに顔をしかめる。

「恋恋?」

美波は俺が持っていた紙に気づく。

パッと美波はその紙を奪うと内容を読み始める。

「えっと何々

……天野恋殿、放課後高等部屋上にて待つ。来なければ命の保証はない。

ってえ?これって」

「…ラブレターだ。」

今まで黙っていた恋は口を開く。


「つ、ついに俺にも春が来たんだーーーーーーー!!!!!」


(え、これ果たし状じゃねーの?)

美波は内心ツッコんだが面白そうなので黙っていた。

ちょうど二人の後ろから日傘を持った光森 雪也がやってくる。

「おはようございます、恋くん、美波くん。」

「おはよう、ユッキー」

「ユッキーってなんですか?」

雪也は首をかしげる。

「君のあだ名?友達にはあだ名をつけるんだよね〜。」

そう言いながらカッコよくウインクした。

「友達……!」

雪也はジーンと涙ぐんでいる。

「そう言えば恋さんはさっきからどうしたんですか?」

「あー、コレだよ。」

美波は雪也に先程の紙をわたす。

「え、コレ果たし状ですか!?なんで…」

「そうなんだよ…ってあれ?恋恋は!?」

いつのまにかいなくなっていた恋に2人は驚く。

「他の生徒もいない!ってもうすぐチャイム鳴るからです!」

2人は急いで教室に走る。


キーンコーンカーンコーン。


2人はギリギリ間に合った。

(あれ?恋恋がいない……。)

ふと美波は教室にも恋がいないことに気がついた。

(まさか、今から屋上に!?

恋恋は、そこまで彼女が欲しかったのか…。今度可愛い娘紹介してあげよ。)

美波は一人、恋に向けて憐れんでいた。



そのころ屋上の玄関では、緊張した面持ちで天野 恋が立っていた。

(この先に俺に惚れている子が・・・・・・・))

俺はゴクリと唾を飲み込む。

ガチャ。

ドアを開けると雲一つない青空が広がる。

そして屋上には…



誰もいなかった。



「…」

俺はキョロキョロと辺りを見回した。

だがいるのは俺だけ。せいぜい近くにいるのはカラスや赤くてちっちゃい虫だけである。

(もしかして…)

俺はあることに気づく。


(俺のためにおめかし中!?)


俺は探偵の様にポーズを決める。

(なるほど…ならゆっくり待つか。)

懐から『おちゃど』の最新刊を取り出す。


七時間後…


屋上にはまだ一人で手紙の主を待ち続ける男がいた。

(やばい…み、水。)

四月とはいえ容赦なく照り続ける太陽に、俺は身の危険を感じる。

激しい暑さと、食欲と、尿意が同時に襲い掛かる。

(でも俺がここで移動する間に相手が来たら)

なんだかただの我慢比べになってる気がする。


ガチャ。


ついにドアの開く音がして、俺は涙を浮かべて喜ぶ。

「恋恋~いる??」

「恋さん大丈夫ですか?」

美波と雪也だった。でも今はそれでいい。

「美波、雪也、ちょっとここで待っててくれ!!」

ダッシュでトイレに駆け込み、水道の水道水を一気に飲み干す。

「おまたせ!!」

ものの三分で帰ってくる。

「さっすがぁ恋恋、恋愛が絡むとバカになる。」

クスクスと笑う美波を雪也がたしなめる。

「おまたせ。」

後ろから声がした。

俺は振り返る。そこには、中学部の制服を着た少女が立っていた。

金髪の髪に、大量に空いたピアス、絵に描いたようなヤンキーであった。

「あたしは中等部三年・下牧 歩(したまき あゆむ)。天野 恋、お前に話があってきた。」

一応こちらが年上なのだがツッコみはしまい。なんせこれから俺は告白されるのだから。

「タイマンで話がしたい。部外者はよそに行ってくれ。」

そういって歩は、美波と雪也を追い出した。

「しょうがないか。美波さん帰りましょう。」

恋と一緒に帰ろうと思っていた雪也はショックそうな顔をしながら階段を降りようとする。

「え、何で?のぞき見しようよ」

真顔で問いかける美波に雪也が注意する。

「だめですよ!きっと大事な話です!!」

「ばれなきゃ犯罪じゃないよ」

「罪悪感が残るでしょう!?」

雪也を無理やりつかむと口を塞ぐ。

「は~い、これでユッキーも共犯♡」

「ムー、ムー!」




「そそ、それで、話って。」

面と向かって話すとなると緊張するなあ。

「わざわざ来てくれてありがとう、待たせたか?」

歩は髪をポリポリとかきながら聞いてきた。

「全然、待ってないよ(大嘘)」

かっこよく笑顔をつくる。

「それより俺に何のようかな?」

本題に入ろうとした俺に歩ちゃんは顔を赤くさせながら取り乱す。

彼女はスーハ―と深呼吸すると火照った顔を整えた。

「天野 恋、お前を呼んだのは他でもない。」

「うん♡」


「あたしが好きな人と両想いになれるよう力を貸してくれ!!」


「はい、もちろん喜んで……ってん!?」

俺は素っ頓狂な声を上げる。

「ありがとう、天野 恋!!」

歩は目を輝かせて喜んでいる。



「何でそうなるんじゃあ!!!!!」



俺は今日一の悲鳴を上げた。

それを美波はゲラゲラと楽しそうに笑っていた。

雪也は美波に口をふさがれて意識が飛びそうである。


どうしてこうなったぁ!












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