第5話「ドッヂボール」
日々リア充爆滅を目指す高校一年生・天野恋(あまのれん)だ。
今日は俺のクラス一年A組と、隣のクラス一年B組での合同授業のドッヂボールだ。
あわよくば、ここでいいところを見せて彼女でも…と思っている。
「だれか、ジャンプボールやる人いる?」
クラスの男子の一人がそう聞くと俺は真っ先に「やりましょうとも」と手をあげる。「恋恋大丈夫なの?B組の方、バレー部のセッターだってよ~」
そう話しかけてきたのは、友達になれそうでなる気がでないモテ男子・美波生(みなみ せい)である。
「身長小さいって言いたいのか?俺は身長は普通だけどジャンプ力はビッグな男だぞ!」
「いやそういう意味じゃないんだけどさ。どうせ恋恋のことだから女子にかっこいいところ見せようとしてるんじゃないかって」
「だったら何が悪い!俺だって一度は女子と付き合ってみたいんだ‼男のサガだろう⁉」
俺の勢いにちょっと引き気味の美波。
「ま、まあオレも愛ちゃんが入ればやる気出すんだけどなあ。」
「俺はモテるため、全力で戦う!美波、俺を引き立ててくれたら愛のTwitterの裏垢教えてやる。」
「よし!ぼっこぼこにしようか、恋恋くん。」
おもいっきり買収された美波と共に、いざ戦い(ドッヂ)の幕が上がる。
「整列!令」
よろしくお願いします!!!!
さてまずはジャンプボール、何事も最初が肝心だよな。B組はバレー部セッターの多胡 創輝(たごお そうき)。身長が高くて一年でレギュラーに選ばれた大物だ。最近、金持ちで有名な三年生の神楽坂先輩と付き合い始めた(天野恋の目の前で告ったためか成功してしまった)。
…つまり、あの時の怒りを返すとき‼
先生がボールを真上に投げた。
神楽坂先輩…赤髪でツンデレキャラなところがすっげー好みだったのに。
ほぼ同時にジャンプする。
そして目を開けるとA組のチームの顔と、奥で恋人繋ぎをして見学している男女のカップル。
「俺の前で…イチャイチャすんじゃねえ!!」
バチーン!
多胡より先に、まるでアタックの様に打つ…が勢いが強すぎてボールが外野に行ってしまった。
「キャッ」「おわ!」
外野に剛速球のように、恋人繋ぎをしていた男女の間めがけて飛んでいく。
「何やってんだよ天野!」「威力やべー」「どんまい恋恋!」
俺は急いで自分の内野に戻る。
てか、失敗した。せっかく20cm以上差のある男からボールをとったってのに。いや、ちょっと待て。俺は悪くない!授業さぼってイチャコラしてるあいつらが悪いんだ。クラスメイトだからと言って手加減すると思うな。後で覚えとけ。
「赤城君、パス…!」
いかにも地味な、でもまた小動物みたいな感じがたまんない女の子が外野から相手の内野に投げた。たしか佐倉 花実さんと言っただろうか。
「佐倉さん、ナイスパス!」
絶対ナイスって感じはないけど対応がイケメン過ぎる。
佐倉さんは顔を赤らめて赤城君の言葉をエコーに、恋するおなごのような目を浮かべていた。けしからん。
彼は赤木 春憲(あかぎはるのり)、バスケ部に所属している。筋肉ムキムキのくせに、顔と対応がイケメンで(しかも多分無自覚で)女子にまあまあモテている。一回生まれ変わった方がいいと俺は思う。
多分、B組で一番体育の実力がある。こいつを倒せば…俺はきっとモテる。
「おりゃあ!」
赤城が投げると一人の女子があたる。
あいつ…!女子にそんな優しいボールで‼
「恋恋、パス」
美波が先ほどの取引で、完全に裏手に回ってくれている。俺は美波にボールをもらうと、野球のようなポーズをとる。回転をかけて軌道を読みにくくしてやるからな!
「くらえ、うらあ!」
やばい!回転掛け過ぎた‼やばい曲がり方をするスライダーが出きてしまった。ボールは赤城とは九十度近く違う方向に向かう。
そして、ボールの向かった矛先は…
あれは!隣のクラスのクール系美少女・流川 楓子(るかわふうこ)さんじゃねえか!流川さんはボールに驚いて固まっている。
バチン!!
体育館にいる人たち全員が流川さんの方を見ていた、いや正確に言えば流川さんをかばった赤城を見ていた。流川さんはさっきより驚いた顔をしていた。
「流川さん大丈夫⁉」
沈黙の中で最初に声をあげたのはほかでもない赤城。
「…大丈夫。」
「よかった、怪我がなくて」
赤城が流川さんに(かっこいいと言われる部類の)笑顔を向ける。
流川さんは顔を真っ赤にした。
周りからはA,B関係なく拍手があがる。(美波まで⁉)
赤城はみぞおち近くに当たって苦しそうだったので保健室に行った、その保健室に行くまで、さっきの流川さんと保健委員だった佐倉さんが二人がかりで担いでいった。それがまた、両手に花という感じがまた、またまた許せない…!
「恋恋うしろ‼」
美波が大声をあげると俺は後ろを振り返った。
顔一面に広がるボール。俺は目の前が真っ暗になった。
目が覚めるとここは…保健室?あ、ドッヂボールで顔面ガードしたら鼻血に気絶したってところか。
「お兄ちゃん、起きたの?」「あ、恋恋起きた?」
ドアから制服姿の二人が保健室に入ってきた。
「ああ、今起きた。俺どんくらい寝てたんだ?」
「もう放課後だよ~恋恋、今日部活なくてよかったね。てかこれからみんなでカラオケ行かない?それと恋恋のリュック、ここの机に置いとくね。」
呑気に俺の鞄を机に置いてくれた。
「カラオケいいですね!お兄ちゃんも行こうよ…ってまだ具合悪いかな?」
愛が心配するように俺の顔を見てくれる。
「ドッヂボールはうちのクラスが勝ったよ。あ、あと赤城くん、流川さんと佐倉さんと一緒にバージンロード歩くみたいに帰っていったよ~。だから恋恋もカラオケ行こっ!歌いたくなってきたでしょ?」
俺は心臓がえぐり取られそうな気分になった。
愛は「バージンロード……(キラキラ)」と目を輝かせている。
「カラオケ行くぞ!愛、美波。」
「ラジャー!」「え、お兄ちゃん大丈夫なの?」
三時間ぶっ続けで歌い続けてやる、くそが!
そういって俺たちはカラオケに向かうのだった。
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