第2話「失恋」

私の名前は天野 愛(あまの あい)。中学三年生。今日は私の兄とその友達にお弁当を作っています。

「ふう、できた。お兄ちゃ~ん、朝ごはんだよ~!」

大声で家中に届くように言うと、ドタン。と二階で何かが倒れた音がする、てか多分お兄ちゃんだと思う。

『今日のお天気は午後から雨の予報です。洗濯物は午前中に干しちゃいましょう!』

お天気お姉さんがきれいな笑顔で言うと私は驚いてベランダに行く。

ベランダにさっき干したばかりの洗濯物を陸上選手並みにばばばっととると、今度は急いで洗面所に向かう。

洗面所に入るとちょうど兄が顔を洗っているところだった。

「おはよう、愛」

私は呑気に挨拶してくる兄を押しのけて、お風呂場に大量に洗濯物をかけていく。

「あいたたた」

「あ、お兄ちゃんごめん!急いでて。」

「いいよいいよ、洗濯物ありがとな」

兄は大丈夫と言っていたが、たぶん大丈夫じゃない。私は昔、二人乗り自転車とぶつかったことがある。だけど私は無傷で、自転車に二人乗りしていた若いカップルが足を骨折してしまった。それくらい私の体は丈夫なんだ。

「うまそう!いただきます。」

「ごめん、お兄ちゃん。私もう行くね、あと午後から雨だから傘持ってって!」

「早くね?てか今出たら…」

リビングで何か言いかけてたみたいだけど、私は聞こえないふりして玄関のドアを開ける。


「行ってきまーす!」

ガチャ。

「え!早くね……⁉」

「え?」

前を見るとそこにいたのは

「美波先輩⁉えっとおはようございます。こんな時間から何してるんですか?」

私は門を開けると挨拶した。

「あ、いや……そう!恋恋と約束してたんだけど俺ももう学校行っちゃおう…的な?」

「兄と?そうなんですか。じゃあ呼んできますね。」

私が家に戻ろうとすると美波先輩が慌てる。

「いや、いいから!オレもう学校行くから!」

「そうなんですか?じゃあ一緒に学校行きませんか?」

「え、うん!もちろん!」

「なら行きましょうか」

私は美波先輩はの横に立つと、一緒に歩きだす。

部活とかがあって、一緒に登校するのは久しぶりだったからか先輩の身長の高さに私は驚く。

でも、性格は昔と全く変わっていない。いつも優しい。

美波先輩は愛私輝学院でも、上位に入るイケメン。私も何度かときめいたことはあるんだけど、恋愛感情には至らなかった。

それは私の体質にある。

私の体質はどんなラブシーンもぶち壊してしまうこと。私は今までの人生で、あわせて百八回失恋したことがある。

その体質は周りにも被害を及ぼす。自転車に乗ってたカップルもいい例だと思う。

だから、恋愛はしたいし、あこがれてるのだが、どうしても失敗するため、期待はしない…てゆうかできないのだ。

「うわ、電車きちゃった!行こう、愛ちゃん!」

そういって先輩が私の手をとる。

「え(赤面)」

手つないじゃった。

電車に入ると先輩はやっと気づいたのか、思いっきり手を放す。

先輩に手を離されると咄嗟に私は思い出した。


失恋番号67。

あのとき好きだった男の子の記憶。

あれは電車に乗ってる時でした。銀色の棒に必死につかまっている私をお構いなしに電車がよく揺れる日でして。

その日は遠足で、その好きな男の子とは同じ班で近くにいました。なので私はチラチラ彼を横目で眺めておりました。

そのときです。一番強い電車の揺れがきて私はとうとう尻もちをついてしまいました。好きだった彼は私に手を差し出して「大丈夫?」と聞いてくれます。私はその手をとると彼にお礼を言おうとしました。話すきっかけにもなりそうで、勇気を振り絞って…

「あ、ありが」

いいかけてたら彼が

「うわ、天野の手汗やば」

かああああ。お嫁にいけないかも。


「愛ちゃん、ぼーっとして大丈夫?」

私は我に返る。

「すいません、ちょっと昔のこと思い出してて。」

「そうなんだ、具合悪いとかじゃなくてよかったよ。」

くっ、優しい。じゃなくて

「美波先輩、これお弁当です。渡すのすっかり忘れてました。昨日頼まれたから」

「えマジで作ってくれたの?」

「はい!今日も一緒に1日頑張りましょう!」

私が元気にお天気お姉さんみたく伝えると先輩は本気の涙を流していた。

「先輩こそ、泣いてますけど大丈夫ですか?」

「うれしくって」

私は先輩がそう言ってくれてうれしかった。失恋は多いけど友達は一生ものだと思いました。

私も、絶対失恋体質治すぞ‼






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