第6話 どうしよう
鳥のさえずりで目を醒ました。
雨戸の隙間から障子に日が差していた。
あれ?
お爺さん、今朝はリカを起こさなかったんだ。
「げんさん、今朝は水汲みに来なかったから、どうかした?」
元気のいいおばさんの声がした。
おばさんはしゃべりながら家に入って来た。
「あら、こんにちは。親戚のお嬢ちゃんというのはあなた? いつもなら天神さんの湧き水を汲みに来るのに、来なかったから、どうかしたかと思って。ちょっと失礼しますよ」
おばさんはリカの返事も待たずに部屋に上がり込んだ。
奥の部屋の襖を開けると、
「げんさん、げんさん。ひぇー、息してない。かねさんを置いておだぶつかい。大変、念仏寺のぼんさんに来てもらわにゃ」
おばさんはバタバタと駆けて行った。
お祖父ちゃん、死んじゃったの?
リカはこれからどうすればいいの?
「池端梨花に誘われたって、それならこの動画は何をしているところ? 明らかに君が梨花さんの頭を沈めている映像だよ。煽動したのも君、もう言い逃れは出来ないよ」
大谷刑事は深々とため息をついて取調室の扉を開けた。
明日は大阪からナオさんが来てくれるという大事な日なのに、今夜も帰るのが遅くなりそうだ。
ああ、ナオさんに早く会いたい。あの笑顔に癒やされたい。
「大谷刑事、はきました」
「ああ」
取調室に戻る一平は気が重たかった。
まだ、中学生だというのに、殺人未遂の取り調べだなんて。
「リカなんか嫌いだよ。友だちでも何でもない、ただの憂さ晴らし。あたしの顔色ばっか伺って、ちょっと大声出したらピクンて躰震わせて、目障りなんだよ。あんな子生きててもしょうがないんだよ」
「生きててもしょうがないかどうかは、君の決めることではない」
一平はユーリこと藍沢百合恵との間の机をバンと叩いた。
不貞不貞しい態度だった百合恵はピクンと躰を震わせ、涙を零し始めた。
気の小さな者に限って強気な態度に出る。
これは大人も子どもも同じだった。
それが、こちらが強く出れば、青菜に塩のごとくシュンと項垂れる。
どういう生い立ちで、こういう子が出来るのだろう。
一平は結婚もしてないけれど、子どもの成長をしっかりと見守ってやらないと、とつくづく思った。
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