第3話 モーモーさん

「草を1本ずつやっとったら日が暮れてしまう」


 爺ちゃんはそう言うと、草を大きなカッターのようなものでザクッ、ザクッと切り始めた。


「ええか、こうやって切るんじゃ。やってみい」


 リカが切ると表面の草だけが切れて、下の草までカッターが届かなかった。


「何と、非力じゃのう。少しずつで良いから切ったもんを牛に食べさせるんじゃ。これがおまえの仕事じゃ。もう、飯が炊ける」


 リカは牛さんに草をあげると、家? 小屋の中に入った。

 入ってすぐがキッチンになっていて、床は剥き出しの土だった。


 リカが寝ていた部屋にお膳が3つ並べられていた。

 炊きたてのご飯に具だくさんの味噌汁、菜っ葉の炊いたのと漬物が載せられていた。

 

「先に喰っとけ」


 お爺さんはそう言うと、お膳の1つを持って、奥の部屋に行った。


 夕べから何も口にしてないリカは、お腹がペコエコで遠慮などしていられなかった。

 美味しい。

 具だくさんの味噌汁が胃の腑に浸みた。

 白菜の漬け物をご飯に包んで食べたら、得も言われぬコンビネーション。漬物の塩加減がいい。


 襖を開けて爺ちゃんが戻って来た。

 手には食べ終えたお膳を持っていた。


 爺ちゃんは残りのお膳の前に座ると、ご飯を味噌汁にぶち込んで、サラサラと掻き込んで行く。


「そのまま置いておいたらいい。外の風呂場に天秤桶があるから川で水を汲んで、風呂桶に溜めるのじゃ。川はレンゲ畑の横の道を真っ直ぐ行くとじきに現れる」


「うわあ、桶だけで重いや」


 濃いピンク色したレンゲ畑は永遠に続きそうだった。

 すると、目の前に林が現れ、水のせせらぎが聞こえてきた。


 川には先客がいた。

 リカより少し年下の女の子。

 傍らには天秤桶が置かれている。

 同じように水汲みに来たみたい。


「おはよう」


 リカが大きな声で挨拶したのに返ってこない。

 うわぁ、スルーされた。

 っていうか花を摘むのに夢中で、こちらに視線も向けない。

 変な子。

 

 木桶にたっぷりの水を汲むと、担ぐことが出来ない。

 欲張り過ぎたかな。

 半分くらい水を戻したが、チャップン、チャップンと揺れて、風呂場に辿り着くまでに水はなくなるのではないだろうか。





 





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