連作俳句「少年時代」

虹岡思惟造(にじおか しいぞう)

俳句連作「少年時代」

草に寝て友と眺めた夏夕焼なつゆや


汗と草匂いの籠る秘密基地 


医者帰り母にねだりしかき氷

     

夏休み週に一度はゴロゴロカレー 

 

ザリガニ釣りバケツ一杯獲れるまで 

 

池に来るヤンマ狙いて我慢待ち

    

手のひらに祖母乗せくれし金平糖


母揚げる天麩羅一つ盗み食い

     

闇に咲く線香花火七変化 

      

駄菓子屋のラムネの旗見ゆ路地の角


手花火に浮かぶ友その姉の顔 

    

姉と見る夜店の仮面の眼は虚ろ


宵宮の神社の裏の闇深し 

 

ガキ大将金魚すくいも上手なり 

   

あんず飴二つ当たりぬ夜店籤


叱られて列に加わる盆踊り


盆踊り太鼓打つのは友の父

 

言うべきを言えずに毟る猫じゃらし

        

ターザンがまだヒーローだった遠い夏


もう二度と夏はないかに遊びけり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

連作俳句「少年時代」 虹岡思惟造(にじおか しいぞう) @nijioka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ