第42話 式典のお祭り

ボクたちはシャルに連れられてお城へとやってきた。


王族の居住区の地下で厳重に警備されている部屋がある。



それは500年前、リーゼロッテの髪の毛に残された魔力を使おうとした貴族たちから、カイゼルが奪い返したリーゼロッテの髪の毛。


それが500年経ったいまでも秘密裏に保管されている。



「これがリーゼロッテの髪の毛よ」


シャルが箱を開けると、時が止まっているかのように綺麗なシルバーヘアが出てきた。



「500年経っても、未だに魔力が残されているのよ。エリスと同じ色でしょ?」


「うん……なんか不思議な感覚」


ボクはその髪の毛に手を触れてみた。


すると、白い光に照らされて、いつもの夢のような感じになった。



「また会えたわね。エリス。」


「リーゼロッテ...?。これって夢かしら?」


「違うわよ。私の髪の毛を触って貴女の魔力と共鳴したのよ。」



今、目の前にいるリーゼロッテは、恐らく処刑された時の姿なんだと思う。


精神の世界で服は着ていなく。

リーゼロッテのお腹は膨らんでいる。



「この姿が気になる?」


「まぁ、不本意な妊娠...なんでしょ?」


「不本意……そうかもしれないわね。でも本当なら産んであげたかったのよ?」


「……でも」


「ふふっ。この子はちゃんと父親はわかっているわ。」


「え、、貴族に弄ばれた...んじゃなく?」


「捕まる前にカイゼルと身体を重ねたのよ。それに、身体強化でいくらでも拒否できるわよ。それでも裸を晒されたのは屈辱だけどね。貴女も女性なんだから覚えておきなさい?」


「泣き叫んでたって伝わってるみたいよ?」


「それは貴族たちが、見栄で流した嘘よ?それにそんな話はどうでもいいわ。時間は限られているのよ。エリス、サラマーン帝国には気を付けなさい。私にしようとしたように魔力を奪う力と同時に魔力を封じる力を研究してるわ。私にもどのような方法かまでは分からないの。」


「魔族とサラマーン帝国...か。処刑ルートを抜けたとしても問題は山積みみたいね。」


「どうかしら?魔族とサラマーン帝国が繋がっているとしたら、1つの強大な敵よ?双方のメリットを探しなさい。私は貴女の事はなんでもわかるけど、それ以外の事は見えないの。これは私が生きてきて感じたことよ。500年経った今、どのようになっているのかしらね。」


「わかったわ。また会いましょう。リーゼロッテ」


「随分と簡単に言うのね。私の魔力はもうそんなに残ってないのよ?でも、頑張りなさい。エリス。」



…………



「エリス?どうしたの??」


「え、シャル...なんでもないよ。」


気が付くとボクはリーゼロッテの髪の毛の前に立っていた。


リーゼロッテの言う通り、たしかに髪の毛の魔力は減っている。ってよりも、さっきよりも急激に魔力が減ってるという事は、ボクと会うこと自体、かなりの魔力を使うんだと思う。

それなのにくだらない話をしちゃったな。

でも、ちょっと気になっちゃってたんだよね。



「やっぱり、この魔力は暖かいですねぇ」


光属性を持っているミレーネはリーゼロッテの魔力の質が分かるみたいで、シャルとかとは違う反応をしていた。



「エリス、私たちは式典に出なきゃいけないから、そろそろ行くわね。」


「エリス様、あたしも剣技のショーこバックに参加するんです……」


「シャルもフレアも行っちゃうんだ。ミレーネは?」


「クロエと魔法士のアルバイトがあるんですよぉ...私も水魔法を使えるようになったから、アンジェリカ先生の紹介で式典を盛り上げる水のショーをやるんです!」


「そ...そう。ならわたくしも...」


「すみません...アルバイトなので事前の練習もあって打ち合わせをしてるので。それに私たちは親に負担をかけちゃってるので、少しでも稼ぎたくて。」


「そうよね……」



結局ボクは一人ぼっちになった。


前世なら、当たり前で何も思わなかったけど。

仲間に囲まれてたら、ちょっと寂しいなぁ。



1人でお祭り会場を彷徨い、シャルも参加する式典を見るために時間を潰していたんだけど。


向けられる視線はみんなといる時とかわらず、ただ。



「お嬢さん、よかったら一緒にお祭りまわらないかい?」


「いえ...」


「俺は他の国から来て、よく分からないから案内してくれないか?」


「すみません...」


「1人なの?暇?」


「暇じゃないです」



少し進むだけでナンパの嵐……

すっごく疲れちゃうわね。

モテるって大変。



「お嬢さん、よろしかったら式典の特等席を用意しようか?」


今度はお父様くらいの年齢の人に声をかけられた...

前世の世界でもモテる人ってこうだったのかしら?


「大丈夫です...」


「まぁまぁ、そんな事言わずにさぁ。おいでよ」


そのおじさんはボクの手を引いて歩き始めた。


「あの、止めてください」


「良いから良いから」


「良くないです。」



いい加減に振りほどこうとした時。



「アナタ何をやってるのですか?」

「おっ、見つけたから連れてきたぞ」

「はぁ...嫌がってるじゃありませんか。ちゃんと、説明はしましたか?」

「いや?」

「アナタは若い子の常識を持った方が良いですね。娘に嫌われますよ?」

「なっ、それは困る。怖い事を言わないでくれよ。リーゼニア。」


「え、リーゼニア様?」


「貴女がエリスさんね。シャルから聞いてるわよ」


「え、、、ならこの人は……」


「そう。式典が始まるって言うのにいなくなってしまった、スタンシアラの国王ですよ」


「えっ??」



ナンパしてきたおじさんが国王様?


う〜ん、リューク王子と被るから違和感はないわね...


そして、ボクは王様と王妃様に連れられて貴族の席へと向かった。

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