第43話 式典
「おぉ、エリス久しぶりだな」
「お父様、お久しぶりです。」
「直接王城に来てしまったからな、夜にでも会いに行こうと思っていたのだが。」
「1人で居たから、俺が連れてきたんだ。良いだろ?」
「これはこれは、陛下。ご無沙汰しております。エリスの件、ありがとうございます。」
「なに、俺が声を掛けたら1発で連れてこれるさ」
「陛下の誘いを断る事なんてするはずないですよ。」
「まだまだ、俺もイケるかもな!」
お父様はナンパみたいに連れてこようとしたなんて思ってないんだと思うけど...
「アナタ?」
「あっ、リーゼニア...すまんすまん」
なるほど、シャルのお母様の一言で全てが収まるのね。
「エリス嬢、なかなか顔を見せてくれないじゃないか。たまには遊びに来い」
「ヴィンスネーク公爵お久しぶりです。」
「間もなく始まるぞ。隣に座れ。お前たちも国の主役がいつまでたってんだ。早く席に着け。国王の挨拶がなければ始まらないだろ」
少し離れた位置に玉座が用意されていて、その奥に座っているシャルがボクに気が付いて手を振っていた。
そして、国王の挨拶が終わると、水魔法のショーが会場を盛り上げている。アンジェリカ先生やミレーネとクロエも巻きスカートにビキニ姿で水魔法を使っていた。
アンジェリカ先生のビキニが少し大きめなのは、おっぱいが大きいからではなく、スライムを隠すためって事はボクは知っているのだけど...
「エリスたんは、演出に参加しなかったぉ?」
「え、シュバルツ君?」
「そんなに驚くぅ?僕ちんはシュバルツ・ヴィンスネークだおぉ?」
「え?ヴィンスネーク公爵の子供なの?」
「そうだぉ。今後ともよろしくぅ。エリスたん♪」
ちょっとこの一瞬で疲れが...
しかも周りを見ると、王族や公爵ばかりで、居心地が悪いし...
どうして、このメンツの中にボクがいるの??
そして、男爵のお父様がなぜ、ヴィンスネーク公爵の隣に座ってるのか...
謎すぎるわね。
シュバルツ君はなにかスケッチしてるみたいだけど?
「何を描いてるのかしら?」
「これはだね、ミレーネたんの新しいフィギュアを作るためにデッサンしてるんだぉ」
「ミレーネのフィギュアは作ってなかった?」
「エリスたんと違って、ミレーネたんは胸が大きくなったんだぉ!」
「あ、そう……小さくて悪かったわね」
「これからだぉ!がんばれエリスたん!!」
すごく魔法をブチかましたかったけど...
周りを見て、ボクは我慢した。
ムカついたけど、シュバルツ君のデッサンは凄く上手てフィギュア作成も上手かったことを考えると、やっぱりそうゆう才能があるんだって思うんだよね。
でも、ミレーネ達のショーが終わると、そこからは各国の代表の人たちと国王であるシャルのお父様が演説を始めたり退屈な時間を過ごす事になった...
その、退屈な時間を終えて待っていたことは……
「エリス!射的があるぞ、やってみるか?」
「いえ、わたくしは...」
「なら、お父様がやるから、見ていてくれな」
お父様とのお祭り散策……
お父様は楽しんでるみたいだけど。
前世で小さい頃に両親に連れられて行ったことはあるけど。エリスでお父様とお祭りを楽しんだ記憶はなかった。
お父様のことは嫌いじゃないけど、めんどくさいって思うのって、思春期だからなのかな?
前世では亡くなった親を偲んでたけど。
エリスになってからは親孝行をやってないわよね。
まっ、いっか。
「お父様、お上手ですわ!」
射的を終えたお父様の腕に抱きつくと、お父様は一瞬ビックリして、笑顔になった。
「よしっ!今日はお父様のカッコイイところをみせえやるぞ!」
たまにしか会えないんだし。
少しくらい親孝行してあげなきゃね。
その日、お父様が王都にいた時に使っていた家に行く事になった。
「おかえりなさいませ。」
「アーニャ?無理してこっちに来なくてもいいのよ?」
「エリスさまのお召し物もお持ちになられていないじゃないですか。それにエリーニャの客足が凄くて商品が追いつかなくて早くお店を閉めたんです」
「着替えなら収納魔法にあるわよ?」
「収納魔法の中はいくら時間が止まってるとはいえ、洗濯しましたか?」
「いや...」
「ほんと、エリス様はご自身の事となると、だらしないんですから!」
アーニャに怒られちゃったけど、他のメイドに任せて帰る時はご機嫌だったから、これから彼氏とムフフな事をするのね...
ムフフな事...いったいどんな感じなのかしらね。
40歳、童貞の佐伯天馬。
最近になって原因不明のパンツのシミについて理解していた。
お風呂場で鏡に向かって自分の身体を見た。
「わたくしだって、いつかはアーニャやミレーネみたいな胸になるわよ...たぶん」
その時、背中に悪寒が走った。
「エリスは十分美乳だぞ!」
振り返ると隠さず腕組みをしているお父様が立っていた...
「何をしてるのですか?」
「ほら、今日は甘えてきたじゃないか!だからお風呂でも甘えていいんだぞ!」
《ウォーターボール!》
お父様を水の中に閉じ込めてる間に逃げるようにお風呂から出た。
冷静な対応をとったつもりだったけど。
やっぱり恥ずかしい。
どんどん女の子になっていってるし。
裸で街の中を歩かされたリーゼロッテの気持ちが少しだけわかった気がした
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