第40話 スタンシアラ

シャルは昨日、胸を抉られる程の大怪我を負ったのに、学校へとやってきていた。


「シャル大丈夫なのかしら?」


「う〜ん、ちょっと体調は悪いけど大丈夫よ」


あれだけの怪我をして、エクストラヒールで身体は治ったけど精神的な物と最上級魔法の魔力を浴びて魔力酔いをしているようだった。


「みんな、席に着け。ホームルームを始めるぞ」


担任のフロイド先生が教室に入ってきても、一つだけ空いた席があった。


「なんだか、よくわかんねーが、学園長から言われたがアルトは学校を辞めたらしい。」


自主退学ではないのはたしかね。

来ないとは思っていたけど、国としても騒がれないように手を打ったんだと思う。


体調の悪そうなシャルは午前中で早退して、ボクも少し疲れていたから学校帰りに寄り道はせずに寮へと戻った。



「お帰りなさいませ、エリス様。」


「あれ?アーニャ?仕事はどうしたのかしら?」


「エリス様。私が何も知らないと思っているのですか?」


「別にわたくしはそんなに危険なことをしてないわよ?」



「あっ!エリスさまがって言ったぁ!!」


「うん、あたしも聞きました!」


え、フレアとミレーネもいつの間に...


「シャルに言われたのよ。ボクはダメって」


「シャルさんも良い事を言いますね。」


「それより、フレア?アーニャに何を言ったの??」


「えっ……その。シャルさんからエリス様が倒れたって聞いたので。」


「はぁ...わたくしはシャルと比べたら大した事は無いわよ。」


「エリス様。私にとっては大した事なのです。もし、次に無理をして倒れる事があるからメイドに戻りますからね!しかも呪印も掛けられていたなんて...」



アーニャに脅しになっていない脅しをされたけど、裏を返すと、アーニャを自由にしてあげたいって気持ちがアーニャに伝わってるって事よね。


「さっき、お城に行ってシャルさんにあったのですが、シャルさんのお母様がおられましたよ。」


「へぇ、王様がフロンティア王国に行ってるからてっきり一緒に行ってると思ってたんだけどね。」


「シャルさんのお母様……王妃様はスタンシアラ家の直系ですから。そもそも王様が国外に行けるのは王妃様がいるからなんですよ。政治は王様のオリバー様。騎士をまとめているのは王妃様のリーゼニア様なんですよ。」


「リーゼ...?」


「はい、リーゼニア様です。王族の女性はリーゼかロッテが付けられるようなんです。合わせてリーゼロッテなんて、昔に悪魔を呼び出した混沌の聖女と同じ名前になるんですけどね。」


「リーゼロッテ……悪い人じゃないよ」


「それは私も聞いたことがありますょ!スタンシアラ王国では他国と比べると聖女リーゼロッテの事は慈愛の聖女って語ってる事が多いんですよねぇ。シェパード魔法学園もリーゼロッテが設立してますからぁ」


「ミレーネは詳しいのね。」


「魔法を使う時にたまに優しい声がするんですよぉ。それから何となくリーゼロッテの事が気になって。シャルさんに頼んでお城の文献を読ませて貰ったんです!」



ミレーネも光属性がゆえにリーゼロッテの声が聞けたのね。


ボクはリーゼロッテに着せられた汚名を払拭したいなぁ。


なんとなく、それはボクがやらなければならない事だと思った。



「あっ、エリス様。旦那様からお手紙が来ましたよ。なんでも、夏休みに行われるスタンシアラ王国の建国500年の記念行事に旦那様も王都にいらっしゃるみたいです。」


「え、 500年記念行事?」


「はい、スタンシアラ王国の始まりとされる者たちが集まってからのようですよ。色々なイベントがあるので、ご主人様も貴族として参加なさるんです」


「へぇ、知らなかったわ。」


「エリスさまぁ!私も文献を読みましたよ!カイゼル・スタンシアラ様が人魔対戦の時に集落を作って、それがスタンシアラ王国の始まりなんですってぇ!」


「カイゼル!?」


「知ってるんですかぁ?」


「え、いや...知らないわよ」


流石に夢の話は出来ないわね。

ボクは誤魔化して話題を変えた。


「ミレーネ。あなたに掛けられてる呪印をとりますわよ」


「呪印...?ですかぁ。」


「そう、ミレーネにも付けられているわよ」


「それならリューク殿下から薬を貰って飲んだら消えましたよ!」


「え、もう解呪したのかしら?」


「はいっ!リューク殿下いわく、エリス様に掛けられていた呪印よりも軽かったみたいです!」



そっか、やっぱりアルトの本命はボクって事だよね。


それにしても、リーゼロッテと共に逃げていたカイゼルがスタンシアラを開国したなんてね。

少しだけ気持ちがスッキリとしたわね!



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