第37話 北の惨劇

王都を一望出来る丘の上。


「呪印が解かれたようだな。仕方ない別の方法を考えるとしよう。俺はお前の魔力を諦めないぞ。エリス。」


大型の鳥獣モンスターに乗りアルトは飛び去って行った。



………………


解呪の影響で魔力が遮断されてボクはいつの間にか眠っていた。

リューク王子も椅子に座ったままベッドに顔を伏せて眠っている。


まっ、いっか。


さっき話に聞いたリーゼロッテ。

男爵の実家もだし、何よりも処刑ルートまでボクと同じだった。


親からの遺伝ではなく、人類の遺伝と言われるシルバーヘアー。他人事とは思えないわね。


窓辺に立つと朝日が顔を出そうとしている時間帯だった。


お城の外では騎士や兵士たちが慌ただしく動いていて、訓練なのかな?

お城に仕えるのも大変ね。



「リューク殿下、大変です!」


廊下から慌ただしい声が聞こえてきて、リューク王子が直ぐに目を覚ました。



「どうした?何事か!」


リューク王子は扉を開けると、騎士の男が立っていた。


「はっ、北の砦付近で怪しい魔法を使う不審人物を見つけ、10名の巡回兵の小隊と交戦。壊滅的被害を受けております!」


「小隊で10名?もしかして、シャルロッテの小隊かっ!」


「そのようです。シャルロッテ殿下は北の砦にて意識不明のまま治療を受けております。死者5名、応援の兵が駆けつけた時には殿下が応戦しており敵は応援を確認し鳥獣のモンスターに乗り逃亡したようです。」


「5名の殉職者は王都に帰還させろ。親族には相応の対応を、他の負傷者は何としても助けろ!俺も現地に向かって対応する」


「はっ!」


そのまま騎士の男が立ち去ろうとしていたから、ボクは思わず声を掛けた。



「シャル...シャルロッテ殿下の様態は?」


「腹部に圧力が掛かって恐らく内蔵の損傷と左腕と左足が骨折していると思われます。」


「そんな中、1人で応戦していたっていうの?」


「はい。他の負傷者に危害が及ばぬようにご自身で引き付けていた様です。」


話の途中でリューク王子が割り込んできた。


「エリス嬢、現地へと向かうぞ」


「は?あなたはシャルのお兄様ですわよね?」


「そうだが?」


「仲の良い兄妹なのですわよね?」


「あぁ。兄妹としては仲がいいな。だが、兄妹としてだ。我々は王族だ。我々の最優先は民なんだよ。王族の心配よりも、民の状況の方が優先だ」


「それは...わかるけど。ですが!!」


「王族は民のために。民は王族の為に。我々は持ちつ持たれつなのだ。それが我々の背負っている責務だ」



リューク王子がシャルの心配をしない事にムカついたけど。

王族の責務。



「クライバート令嬢。ご安心下さい。王族の方々が民を守るように、我々騎士と兵士は王族を最優先にしています。そして、リューク王子のお気持ちを察してください。」



リューク王子はただ、前を見ながら用意された馬に跨った。心の中ではシャルを心配している。

改めて見るとそう思えた。


「エリス嬢、早く乗れ。」


ボクが後に乗った事を確認するとリューク王子は無言で馬を進めた。



「魔族か...」



その一言だけ発して、馬を降りるまでリューク王子は言葉を出すことは無かった。



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