第36話 慈愛の聖女リーゼロッテ
リューク王子に言われた部屋に行くと中央にベッドがあり、周りはロウソクの火が部屋を薄暗く照らしていた。
「エリス嬢。来てくれて良かった。信用してもらえて何よりだよ。」
「仮にも王子様ですわよね?それにシャルのお兄様ですもの。へんなことされたら、わたくしが痛めつけた後にシャルに泣きつきますわ。突然求婚する人ですもの。」
「なんだか、手厳しいな。君の肌を確認する必要もあったしね。それくらいの気持ちで解呪するつもりだったのさ。まぁ、エリス嬢なら本気で娶りたいと思うけどね。」
「そこまでの事なのかしら?」
「あぁ。そこまでの事だ。いくら俺やエリス嬢が魔法に優れていても、属性を奪うことなんて出来ないんだ。人間族には出来ないだろうね」
「なら、誰が出来るというのですか?」
「魔族だな。」
「魔族は聞いたことはありますけど、人族とは違うのですか?」
「あぁ。魔族は根本的に人間とは違うんだ。解呪しながら話を聞かせよう。横になってくれ。」
ボクは指示に従い横になった。
500年ほど昔の話。
とある国に慈愛の聖女と呼ばれたリーゼロッテという人物がいた。
リーゼロッテは様々な光魔法を使い、人々の暮らしを豊かにしていた。
魔道具の開発、魔法学校の設立。
そして、1番の功績は奴隷の解放。
人々はリーゼロッテを慈愛の聖女と慕い、リーゼロッテも貴族出身でありながら、平民とともに歩みを進めていた。
しかし、それをよく思わない者も存在する。
安価で死ぬまで労働させることの出来る奴隷制度がなくなり、能力のある平民は騎士や政治の要所に付けるようになった。
男爵であったリーゼロッテの実家への圧力。
リーゼロッテの暗殺未遂。
最終的には王への謀反の冤罪により投獄されてしまう。
裸にされ市中連れ回し。
広場への磔。
恥辱を味らわされ、夜中の牢獄には様々な貴族に弄ばれリーゼロッテの泣き叫ぶ声が響いていたという。
誰のかも分からぬ子を宿し、心も身体も壊れたリーゼロッテは王命により処刑されてしまう。
リーゼロッテにより要職に引き立てられた平民に出来たことは、リーゼロッテ亡き後、代名詞とも呼べる、シルバーの髪の毛を奪取し祀ることくらいであった。
その後、制御不能となっていたリーゼロッテの中に溜め込まれた魔力と宿した子の魔力が暴発し、その膨大な魔力によって天が裂け時空の歪みから悪魔がこの世界に到来し、人魔大戦へと発展した。
時空の歪みは10年に渡り裂け続け、リーゼロッテを陥れた祖国は滅亡。
リーゼロッテの教えを受けた平民達は被害を受けながらも半数近くは生き延びた。
子を宿しにくい悪魔は少数だが、圧倒的な力を見せていたが、光属性は悪魔に有効であり、当時の勇者フロイドにより人族も善戦していた。
そして、時空の歪みが閉じ、残された悪魔は荒廃した土地へと逃げ延びたのであった。
歴代の勇者によって悪魔はその数を減らし。
人族を攫っては、子を宿した。
数は増えたものの、薄まった血では悪魔の能力は発揮出来ず。
いつしか、悪魔ではなく、魔族と呼ばれるようになった。
未だに討たれていない真祖の悪魔の力は強大であるため、勇者パーティ以外の真祖との接触を避けるお触れが出されて現在に至る。
「なら、魔族は再び時空の歪みを作り出す為に光魔法を奪おうとしているという事ですか?」
「その可能性が高いね。ただ、この話は王族にしか伝わっていないんだ。人魔大戦の混乱を利用してリーゼロッテを悪者にしているのさ。今では悪魔を呼び出した謀反者として悪名が残っているがね。」
「報われないわね...」
「そうだね。全ての奴隷とはいかなかったが、解放された奴隷は現在もスラム民として生活しているよ。リーゼロッテによって人権が与えられては貴族も奴隷に落とせなかったようだ。」
「なんだか、それだけでも報われた気がしますわね。」
「あぁ。そして領地の改革、スラムの解放、光魔法、シルバーの髪の毛。エリス。君はリーゼロッテに良く似ている。それゆえに魔族から狙われる可能性が大いにあるんだ。」
「わたくしを...しいては世界を守る為の求婚ですか。」
「だが、君は外見はもちろん。中身も美しい。本気で君を娶りたいと思ってるぞ。」
「そうですか、、、」
「まずは、その右手の石を消してくれるか?」
「なら、この右手を胸からどいて貰えます?」
「なっ、これは解呪だぞ。決して変な意味は……」
「目を外らす前に辞めて貰えるかしら?」
「ははっ...じ、冗談だよ。だが、解呪する為には触れる必要があるんだ。」
「わかってますわ。治療とはいえ胸を触られてるのですもの。小言のひとつは言いたいですわ。」
「この魔族の魔力を使って解呪の薬を作っておこう。もし、エリス嬢のようにされた者がいたら、救ってやってくれ。」
あ、ミレーネ。
リューク王子の解呪を見て、ボクも出来ると思うけど、リューク王子と比べると精度と低く時間も掛かる。
でも、薬を貰えるなら助かるわね。
佐伯天馬の気持ちになって胸を触られてるのは耐えられてるけど、純粋な女の子のミレーネにはきついわよね。
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