スタンシアラ王国編

第34話 リューク・スタンシアラ


「エリス、予定がないなら家に来てくれる?」


突然のシャルからの誘いだった。


「突然どうしたのかしら?」


「ほら、前にエリスの光属性について話をしたじゃない?その件でお兄様がお話をしたいみたいなの。」


「あ〜、そうね。わかったわ。」


シャルのお兄様といえば、恥ずかしい言葉を普通に使う痛い王子様よね?

シャルいわく、あんな王子様は初めて見たらしいけど。



その学校の帰り、シャルと一緒にお城へと向い、王族の居住区に入るとシャルが満面の笑みを浮かべていた。


「何その笑顔、すごく嫌な予感しかしないわね...」


「ふふっ。お兄様は王子として。私は王女としてお話するのよ?エリスも正装しなきゃね?」


「いや、その。ボクは汗かいちゃったら...ね?」


「汗をかいたのかしら?なら仕方ないわね。それとボクなんて言い方は良くないわ。私達以外と話をする時はわたくしでしょ?その方が可愛いわよ?」


「え……じゃあ」


あの窮屈なドレスから解放されるのであれば、ボクという呼び方を変えることくらい何とも思わない。

それに最近は意識をしない限り佐伯天馬の意思は出てこないものね。


パンッパンッ


「お呼びでしょうか?シャルロッテ殿下」


「えぇ。私の友人のエリス嬢が汗をかいたらしいの。お風呂に入れてあげてもらえる?」


「かしこまりました。」


「え……」


「ふふっ。先にドレスルームで待ってるわね!」


きっと...コミュ力ではシャルに敵わない。

本気で魔法で逃げない限り、シャルの思い通りになるわね、まぁ、王城で魔法を使ったら一発処刑ルート行きなんだろうけど。


脱衣場に連れていかれると、メイド達に身ぐるみを剥がされた……


とはいえ、下着は自分でだったから助かった。


お風呂に入っていてもメイド達の視線は変わることなく、とっても入りにくいわね...


お風呂から上がるとタオルを渡されるんだけど、許可を出さない限り裸の状態で身体に触れるのは主人に対して失礼らしく、身体を拭くのを見られるだけ……いや。見られていた。


パンツを履くと...


「エリス様。こちらへ」


「え、なに?」


「なにって…シャルロッテ殿下と同じボディケアクリームを……」


「へ?」


そっか!女子って保湿だの、なんだのやってるんだったわよね。

そこは頭に無かったわ


「申し訳ありません!こんなにもお肌が綺麗ですので、愛用のクリームがあるのですね!」


「いえ?使った事はないわよ?」


「「「うそ?」」」


3人のメイドの声は見事にシンクロした。


「これは最近出来たエリーニャというお店の1番人気ですよ?エリス様のご実家では?」


「あ〜、きっとメイドだった娘が店長をやってるから、新作を作ったんだと思うわ。どうしてわたくしにはくれなかったのかしら?」


「恐らく、エリス様には必要ないと思ったのではないでしょうか?」


「それにっ!メイドが店長にもなれるんですかっ!!」


「そうね、ウチの領地では男女、身分関係なく能力重視なのよ」


「才能ある平民にはまさに聖女のようですね」


こうしてわたくしの知らない所で聖女として知れ渡っていった。



その後、キツいコルセットを付けられて胸は寄せられてドレスを着ることになった……



「待ってたわよ。もうお兄様がお待ちよ?」


「ごめんなさい。メイドさんとお話していたの」


「うちのメイドはお話が好きだからね。良い子たちなのよ」


扉を開けると、王子様がソファーに座って待っていた。



「おぉ、エリス嬢。よくぞ俺に会いに来てくれた。とても輝いて眩しいぞ!」


「お招きありがとうございます。リューク王子……そして、シャル?ライトの魔法はやめてもらえるかしら?」


「ちょっとした演出じゃない。ふふっ♪」



なんだろう、この緊張感のなさ。

2人とも王族なんだけどなぁ。

リューク王子の正面に座って話がスタートした。


「さて、本題に入るとしよう。知っての通り光属性持ちは集められて勇者パーティに参加する事になっている。どうだ?参加したいと思うか?」


「いえ、正直まったく思いません」


「だろうな。シャルから聞いてるよ。エリス嬢はクライバート領の事もあるし、国に変革をもたらしている人物だ。事が公になるまでは隠し通す事にしたのだが、それで良いか?」


「はい、願ってもないです。」


「もう1つ、簡単に勇者パーティに選ばれない方法もあるが、どうする?」


「簡単にですか?」


きっとこの先、嫌でも光属性を使わなきゃ行けない時がくるだろうし。

通常の魔法を使っても魔力の質でわかる人には分かるから、そっちの方がいいのかな?


「なに、難しい事では無い。エリス嬢がはい。と言えばいい話だ」


「なんでしょうか?」


「俺の嫁になれ。そうすると将来は王妃だぞ?」


「お断りします……」


「何故だ!」


何故って言われても...シャルは笑いを堪えるので大変そうだし。


「申し訳ありませんが、そのような事は考えておりませんわ」


「分かった。仕方ないな。1晩時間をやろう。しっかりと考えるのだ。」


えっ?断ったよね??


「寮のメイドにはこちらから伝えておく。シャル!エリス嬢を客間へ案内してくれ」


「お兄様、少し強引ではありませんか?なんだか変ですよ?」


「強引?俺がか?そんなことは無い。命令に従え。」



シャルという味方を失い、眠れない夜を過ごすことになった。

だけど、命運を変える一日となるのである。


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