第11話 偽聖女ルート
クライフ様に領地の説明をしながら栽培している物を紹介していた。
「お嬢様は果物も栽培されてるのですね」
「えぇ。気候によって作れない物もありますけど、イチゴ等も栽培を始めましたわ」
「では夏から秋に掛けてのブドウ等の栽培もしてみてはどうでしょう?苗はギルドから提供しますよ」
「クライフ様からの提案。それは何か裏があるのでしょうか?」
「そうですね。近年ブドウの栽培が上手くいかなく、ワインの売価が上がってしまってるのです。それに品質も違い、味にもバラツキがありまして。」
ワインか!
なら、黒ブドウね
「分かりました。お任せ下さい!」
うふふっ。
ワインを特産にしちゃって、蒸留酒なんかもいいわね。外部から知ってる人を雇わなくちゃ!
こうして、ギルドマスターの訪問を終えて、洋服の工場を建てることになった。
ウキウキとした気持ちのまま眠りについた。
…………
これは夢かしら?
窓辺から外を見つめる1人の女性がいた。
あれ?大人エリス??
今までは当事者目線だったのに第三者目線だよね
「あいつ!勇者様に馴れ馴れしくして!おぼえてなさいよ!」
大人エリスの視線の先には煌びやかな鎧の男性と白いドレスの女性。
大人エリスも白いドレスだけど、勇者と2人の聖女って事かな?
そして場面は変わり。
「ミレーネ、あなたアルト様と随分と仲が良いようね」
「エ、エリスさま!私も今回の遠征にお供する事になりましたので...」
「ふ〜ん、あたしは聞いていないわよ?それにミレーネはうちの領地のスラム出身でしょ?なぜウチの領地からミレーネとフレアの2人が同行出来ているのかしらね?」
「そ、それはエリスさまのご好意かと……」
「わかってるじゃない。あまりアルト様と馴れ馴れしくしない事ね。」
さらに場面は変わり。
モンスターと対峙する兵士たちがいる。
そこにエリスとミレーネ。あと成長したフレアかな?
「エリス様、ミレーネ!こちらに負傷した兵士たちがいます!」
「そんな...こんなに負傷者がいるなんて。」
「ふん、回復した所でもうダメね。あたしの魔力の無駄使いよ?フレア、楽にしてあげなさい」
「エリス様!あたしには出来ません……」
「出来ない?やればいいのよ?」
「エリスさま...私はみんなを助けたいですぅ...」
「ふん、聖女としての能力はあたし以下なのに生意気ね。現実を見なさい。死にそうな者を助けた所で何になるの?腕が無い者もいるのよ?」
「そ...それでも!!私は助けたいっ!!!《エリアヒール》」
ミレーネが光り輝き、その光は負傷した兵士たちに降り注いだ。
欠損した箇所は元には戻らなかったけど、傷口は塞がっていった。
「な...なぜミレーネごときが最上級魔法を...あたしにも出来ないのに」
そして、一本の剣がエリスの首に当てられた。
「な、なんのつもり?フレア...」
「お嬢様。あなたは聖女として道を間違えました。いえ、産まれた時からでしょうか?ミレーネの力が開花した今、貴女は不要です。王命により貴女を捕らえます。」
「え、王様が?何かの間違いよ!!あたしは聖女なのよ?」
「聖女が何人の怪我人を殺めました?ワガママも度が過ぎれば独裁者です。もう一度言います。王命により貴女を捕らえます。」
「捕らえた所でお父様がなんとかしてくれるわ!」
「残念ですが、クライバート男爵も同意しております。貴女は偽聖女です。皆の気持ちはどうぞ処刑台で聞いてください。」
………………………………
「んっ...はぁはぁ...夢?」
「お嬢様!!どうかなされました??」
「フ...フレア??」
「はい。私もアーニャさんもいます。どうかご安心ください。」
「フレア、エリス様はうなされていただけ。安心なさい。こうゆう時は抱きしめてあげるの。」
「お嬢様...」
フレアに近寄られて、一瞬ビクッとした。
夢で...いや、処刑ルートではフレアに剣を向けられ、捕らえられた。
なんなら偽聖女のレッテルを貼ったのもフレアだった。
でも!
それは処刑ルートでの事よね。
このフレアではないわ。
「ごめんなさい、フレア。ありがとう」
「お嬢様...あたしは当然の事をしているだけです。お嬢様を抱きしめられるなんて、あたしは幸せです。もっと強くなって、お嬢様を一生お護りします。」
うん...ありがたいけど。
強くなりすぎても...ね?
怖いから...
ミレーネだったかな?
フレアもだけど。
スラムには有能な方がいるのね。
大丈夫...処刑ルートのボクは反面教師!!
そうならない様に、そうね。
小規模でも学校のような物をつくろうかしら。
そうすると、いつか。
ボクを処刑させないように知恵を振り絞ってくれる人も出てくるかもしれないわ!
陥れられない様にだけ気を付けなきゃね!
そして、アルトとかいう勇者...
悪いけど今のボクは男には靡かないよ!
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