第8話 ワガママお嬢様の発案
今日は畑で働いてもらう人を募集しにスラム街へとやってきた。
「エリス様...何をしようとしているのですか?」
「何って、従業員を募集するだけじゃない」
「それは分かりますが...何故エリス様までボロ布をお召になられているのですか?」
「ボクは今までスラム街には来ていなかったし、そこまで顔はバレてないもの。面接でいくら良いことを言ったとしても、こうゆう所では人の本音を聞けるのよ?」
「たしかにそうですが...エリス様までボロ布を着なくても...」
「お陰で誰もボクって気付いてないよ?この前炊き出しを手伝った時に居た人たちも気付いてないもの」
「誰も気が付きませんよ!!綺麗な髪の毛も泥だらけにしちゃって...」
「ほら、アーニャ。ジョセフとお父様が来たわよ。ちゃんとお話を聞かなきゃね!」
アーニャは戸惑いながらも、やってきたお父様たちの方を見た。
『今回は男爵家で作る事となった農地で働く者を決める為、簡単な面接を行う事とした。スラムの領民にも仕事を与えるという、我が娘エリスからの発案だ。これはクライバート領を豊かにする為の第1歩だ。今回の募集は平民、スラム出身者。身分は問わない。働きたい者は仮設天幕の前に並ぶように。』
お父様が挨拶を終えて天幕へと入っていく。
そして、ボクの周りには街に住む平民とスラム出身者だけになった。
「エリス様、我々も天幕に行きましょう。旦那様がエリス様のお姿を見たら驚くと思いますが...」
「しっ!!名前を呼ばないで!」
「え?」
ボクは周りの人達の話に耳を澄ませた。
(あのワガママお嬢様が発案?何か裏があるんじゃないか?)
(領民がメイド虐めを知らないとでも思っているのだろうか?どうせ、虐めの対象をつくりたいだけだろ?)
《私、話だけでも聞いてみようかな?》
《やめなって!ろくな事にならないって!あのお嬢様が私達スラムの人の事を考えるはずない!ううん、人とすら思われていないかも!》
《うん...でも、食料のお恵みを貰えたり、お風呂にも入れるかも知れないよ?》
《フレアはすぐに物につられちゃうんだから...》
《えへっ。だって、炊き出しもお嬢様の発案らしいし。きっと悪い噂だけで優しい人なんだよ!親のいないあたし達にはいい話だと思うよ?》
(俺も受けてみっかな、お嬢様って10歳なのにめっちゃ美人だろ?)
(お近付きにはなれるかもだな。でも殴られるのは覚悟しといた方がいいぞ?)
(殴られ……てみたいよな。むふっ)
(お前...拗らせてんな)
アーニャは顔を赤くして怒ってるけど、悪く言われるのは想定内。9割は疑ってるし、ボクの悪口三昧だった。
でも、そんな中でもボクを信じてくれてる人も居ることは素直に嬉しい!下心ある人はちょっとあれだけど……
その中でも気になったのは、フレアって女の子。
ボクより少し年上なのかな?
親が居なくスラムで育ったみたいだけど、真っ直ぐに育ってるし、畑仕事じゃなくボクの側においておきたいくらい!
ボクも歩きながら良い人を数人目星をつけた。
「アーニャ、もういいわ。行くわよ!」
「はい...」
「そんなに怒らないで?仕方の無い事だもの。それでも信じてくれてる人はいるんだから。頑張らなくちゃ!」
「エリス様...女神のような方ですね」
「何を言ってるのかしら?領内が豊かになったら、またお菓子も食べられるようになるのよ?良いことしかないじゃない。」
《クリーン》
ボクはクリーンの魔法でアーニャと自分の汚れを落として天幕の隅でお父様の面談を聞いていた。
話を聞きたいだけの人もいて、お父様は疲れ果てていたけど、領内の繁栄の為に領主として頑張ってもらわなきゃ!
「次……名前と自己紹介、志望動機を言ってくれ」
「あっ、はいっ!!名前はフレアです。冒険者をやっていた両親が亡くなり、長屋で生活をしています。両親習って剣術を少しできます!あと...スラムで炊き出しを行ってくれているお嬢様に恩返しがしたく、志望しました。」
「炊き出し?エリスがか?」
あっ、お父様に言ってなかった……
「はい!お陰で空腹を耐えることができます!」
「なるほど...それでエリスの料理が必要分だけになったのか。甘味も見なくなったしな」
「えっ!!そうなのですか??」
「ゴホンッ...お父様その話ではなく、今は農地の事をお願い致しますわ」
褒められ慣れていないエリス...そして佐伯天馬。
嬉しいってよりも、恥ずかしくなっちゃって止めちゃった...
「あぁ。そうだな。フレアとか言ったか?普段はどのように生活してる?」
「はい。女性専用の長屋で役割分担をして生活しています!あたしは野草を取ったり小動物を狩ってきています。」
細い華奢な身体つきなのに筋肉があるのは走り回ってるからなのね。魔力は少ないようだけど剣士の才能ならあるのかもしれないわね
「もういいわ。フレア?ボクに着いてきて。お父様、あとはよろしくお願い致します。アーニャ行くわよ。」
「えっ、お嬢様??」
「いいから、付いてきて」
「あ、はい」
ボクはフレアを連れて屋敷へと向かった。
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