第7話 前世の生活水準に慣れすぎています
この世界の文化は遅れている。
遅れているというよりも、魔法があるから近代化してないのね。
「エリス様、お湯を掛けますね。目を閉じてください!」
裕福な家庭には貯水槽があり、魔法士が水魔法でそれを貯めて、風魔法で水分を飛ばすことで水魔法になる。
もちろん、空気中の水分を集めてるから実際に水を生成するわけじゃなく、泉や川で亜空間魔法に収納する。
空間魔法と風魔法を使えなきゃ水魔法は使えない。
いわば、上級魔法というやつなんだよね。
前世のゲームなら、初級魔法だったと思うんだけど、この世界では違うらしい。
なので、貯水タンクに水を貯めるためには上級魔法士が必要になるわけで...お風呂は裕福な家にしかない。
毎日お風呂に入れるのも貴族ならではって事なんだよね。
「エリス様、シャンプーを洗い流しますね!目を閉じて下さい」
裕福な家庭にしかないということは、便利さへの追求が少ないという事。
何が言いたいかと言うと……
シャワーが欲しい!!!!!!
栓を抜いてお湯の入ったタンクからお湯を桶に貯めて、頭からぶっかける!!
アーニャ達はそれでも喜んでいるし、なんならお風呂に入れるって事でボクのメイドを喜んでやっている。
エリスが過去にいくらメイドをクビにしても、補填され続けるのは、お風呂にも入れるっていう利点があるからだ!
もちろん、エリスのお世話で入れる程度なんだけど。
でも、シャワーの存在を知っているボクはそんな事では満足出来ない!!
この世界の生活面において、前世の生活水準になれすぎて辛い……
「よしっ!シャワーを作るわよ!!」
「エリス様?シャワーってなんですか?」
「シャワー...それはね。お湯が拡散されて身体にかける事の出来る道具よ!」
「でも、桶にお湯を溜めてもいいんじゃないですか?」
「アーニャは分かってないわね。まぁ、作ったあとを楽しみにしていてちょうだい!」
「はい。エリス様の言うことなら楽しみです!」
屋敷内ではボクの印象は3ヶ月前と大きく変わっている。とくにアーニャは信仰している神のように崇めてくれるし。
これを世界に広めたら...
処刑ルートから外れれるんじゃないかな?
「そうと決まったら、上がるわよ!」
「ちょっと……エリス様!髪の毛を乾かさなくては!!」
「大丈夫!お父様の所に行ってくるわ」
走りながら魔法で髪の毛を乾かしてお父様の書斎へと向かった。
「おぉ、エリス!どうした?お父様とお風呂に入りたいのか?」
「いえ、もう入りました」
「なっ...そうか。なら、一緒に寝たいのか?」
「それも違います!圧力をかける魔道具はありますか?あと、お水を流せるような管があれば!出来れば大元の場所でパワーがあり、持続可能な物がいいです!」
「圧力か……無くはないが、長時間は使えないぞ?」
「魔力の補充が出来たら長時間使えますか?」
「それは可能だ。だが、Aランクモンスターの魔石が必要になるぞ?」
「モンスター討伐ですか……」
「馬鹿言え!Aランクモンスターを楽に狩れるものなんてSランク冒険者くらいだ!Sランク冒険者は世界に10人といないんだぞ!軽々と狩れるものでは無い!」
そりゃ、そうだよな。
そんな簡単に行く訳もなく。
「王都に保管されているかもしれないがな」
「本当ですか??」
「あぁ、だが。公爵である技術開発の大臣の許可がいるな。」
「お父様...エリスのお願いです...」
お父様に抱きついて、上目遣いでお願いしてみた。
もちろん、やってる自分でキモイ事はわかってるけど、鏡に映った自分を見ると、物凄く可愛から、許してしまう...
「エリス……お前の頼みでも……」
ボクはジャンプしてお父様の方に腕を回した。
「エリス…いい子にしますから。」
「おぉ...わかった。掛け合ってみよう」
「ありがとうございます!お父様大好き!」
やってる事は卑怯なんだが、それは親子という事で許して欲しい。
なによりも、お父様も喜んでるし。
「おぉ、お父様も大好きだぞ!ほっぺにチューしても良いぞ?」
「お父様、アーニャが待ってるので、また後で!!」
「おっ、おい!エリス〜……チューは?」
何か聞こえたけど、ボクはお父様から離れて書斎から出ていった。
そして、回りくどいことはせず。
自分でもAランクモンスターを狩れるように特訓しようと誓ったのである。
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