第6話 ダグラス・クライバート
その翌日。
「エーリースー!!!」
「お父様?」
「会いたかったぞ!エリス!!」
アーニャとは正反対に力強く抱きしめてくる男。
頬ずりは、2日間の王都からの馬車の移動で生えた髭がジョリジョリしている。
この男の名前はダグラス・クライバート
エリスのお父様だ。
「お父様……痛いです」
「悪い悪い!!久しぶり会えたんだ!抱きしめさせてくれ」
記憶にはあるけど、転生してからは初対面の男。
不思議と頬ずりされても嫌悪感がないのは父親だからなんだろう。
その日のお風呂はアーニャ達はいなく、お父様と入ることになった。
「2日間、馬車の中で湯浴みしか出来ていない。先に風呂の準備を頼む」
そして、初めて身体にタオルを巻いたのだった。
父親でも恥ずかしい……
いつのまにか、ボクには乙女の心が宿り始めたのかもしれない。
「よし、お父様が身体を洗ってあげよう!」
「いえ、大丈夫です」
「……」
「お父様?」
「あっ...あっ...エリス...」
よほど身体を洗いたかったんだろう。
動きを止めてしまった...
お父様が浴槽に向かった後に急いで身体を洗ってボクも浴槽に向かった。
「お父様?エリスももうすぐ11歳です。もうお風呂をご一緒するのは恥ずかしいです」
「なっ……」
そして、絶望感を全面に出し始めた……
「エリスも年頃なのです。ご理解ください」
「なっ……お父様はクビか?」
「何を仰ってるのですか?」
そうだった。
エリスはメイドをクビにし続けていたんだ。
「そうか...エリス。お前も大人になったんだな」
「はい。」
「わかった。今からは大人の娘として接しよう……」
明らかに納得してない顔だよね?
「そ...それで、今日はお父様の部屋で眠るか?」
「いえ、1人で眠れます」
「ガーン……」
「お父様??」
顔をお湯に付けて力を失ったように浮かんでいる……
「お父様、冗談はやめてください!苦しくなりますよ?」
「はっ!!スキあり!!」
立ち上がってお父様を起こそうとすると、ボクの身体に巻いたタオルに指をひっかけて外された……
3ヶ月で少しだけふっくらした胸……
「何をするんですか!!」
パチーーーッン!
はっ!
ついついビンタしちゃった!
「ははっ、今日は初めてエリスに叩かれた記念日だな。娘に殴られるのも捨てがいものだな。それにしても、少し胸が膨らんだか?」
「お父様……」
「どうした?」
「キモイです」
「なっ……」
あまりのショックなのか、そのまま後ろに倒れ込んで風呂に沈んだ……
その間にタオルを巻いて、父親を放置したまま脱衣場へと逃げた。
それに察知したお父様は直ぐさま追いかけてきた。
「エリス、なんだそのパンツは?」
あっ、油断した。
着替える時に普通に見られた……
「これは...エリスが作った女性用の下着です」
「こんなに小さなもので窮屈ではないのか?」
「はい。フィット感があります。」
今までは親バカ丸出しのお父様だったけど、ボクの作った下着を見るやいなや、真剣な眼差しになり、技術開発局副大臣の目になっていた。
「これはエリスが考案したのか?」
「考案といいますか……そうですね。エリスが作りました」
「エリスにはこのような才能があったのか。流石はお父様の娘だ!」
裸のまま、抱き上げられたけど。
なんか嬉しそうだし、いいか。
アレも反応してないし、娘に欲情してる訳じゃ無さそうだしね。
てか、日本人の平均よりデカい気がするけど。
まぁ、それはどうでもいいや。
「お父様。あとは畑も作ったんです。お野菜や下着を一定量の制作が出来たら技術開発局副大臣として、商業ギルドへの売り込みをお願いしたいのですが?」
「畑もか!どうやって作った?」
「はい、今は魔法ですが。今後は家畜の糞尿や腐葉土で肥料を作り、領内での生産を考えています。そうする事で領内は少し豊かになります。」
「ほぉ。10歳なのに考えているな。それにエリスの雰囲気も変わった。だが、お父様の目でしっかりと確認してからだな。商業ギルドも見通しが立ってる物じゃないと相手にもしてくれないからな」
「はい!よろしくお願いします。」
「それと、もう1つ条件がある。」
「なんでしょう?」
「それは……今日はお父様と一緒に寝ることだ!」
「え?」
「商業ギルドに取り扱ってもらうのは大変なんだぞ?」
「...わかりました」
「娘の成長は嬉しいものだな!こんなにも逞しくなって……」
「いえ、感謝の気持ちを持てるようになっただけです。」
「もしや!男か!?男が出来たのか!!どこのどいつだ!!」
「違います!!」
その後はアーニャ、ジョセフと同様。
お父様の驚く顔が見られた。
驚きから興奮に変わり。
長旅の疲れもあって、夜はすんなりと眠ってくれた。
約束は今日だけだもんね!
明日も寝ようなんて言われてもお断りです!
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