第10話 毒の実験結果

私は実験材料となった冒険者へ、体に影響のない程度の毒を飲ませた。


「これから、毎日ここに通うようにね。生活に影響が全くないのであれば報告して、毒の効力を少し強めるわ」


私の有無を言わさぬ態度に冒険者は頷くしかなかった。


そんな日々を1週間続けていると、ミリーナちゃんが話しかけてきた。


「あの冒険者、毒耐性Lv1のスキルが芽生えてる」


「本当!!。ならこれでもお金が稼ぐことができそうね」


ミリーナちゃんは首を横に振って説明してくれる。


「鑑定スキル持ちと聖魔法持ちの人間は、ほとんど教会が独占しているの。つまりあの冒険者が毒耐性のスキルを得たことが分かるには教会に調べに行く必要がある。スキルを得る方法を調べることは禁止されていないけれど、流石に毒を飲ませるのは教会が良しとはしないと思う」


「じゃあなぜ、あの冒険者は私のもとに運ばれてきたの?教会に聖魔法士がいるのがわかっているのであればそちらに行った方が確実に治ると思うのだけれど」


「師匠曰く、教会は腐敗した組織。献金を払えなければ治療を行わないし、献金を行える者には禁止していることにも目を背ける。だからあれを連れてきた冒険者は貴族ぐらいしか毒耐性スキルを得られないと言っていた。何も弱毒を準備できないだけが問題ではない」


「この世界でも宗教は腐敗して力を誇示しているのね」


「佳代子の世界でも宗教が力を持っていた?」


「一時期はね。私がいた時には既に力を失って神への信仰を目的としたものになっていたわ」


「それが本来あるべき形、でもそれが腐敗するのは避けられないってことね」


「そうね。私たちは手の届く範囲のことをしましょうか」


「それであの冒険者はどうする?大人しく教会に行くとも思えないし、私が教えてあげても冗談としかとられないでしょうし」


「でも、毒を飲まされることから解放されるとわかったら喜ぶと思うわよ。それに効果が判明した時点で契約書にしたがって行動するしかないし」


「そうだった。じゃあ私の話を聞いた時点で毒耐性スキルの獲得テストは終了ね」


その時入口のドアが勝手に開かれ、実験体となった冒険者がやってきた。


私は、その冒険者の頭に拳骨を落とした。


「治療院とはいえ、レディの部屋に入るときはノックくらいしなさい。そして、あなたに毒耐性Lv1のスキルが芽生えたわ。これで実験は終了。帰っていいわよ」


冒険者は喜び、駆け足でギルドの方向へと向かっていった。


こうして毒耐性を得るための実験は終了したが、この待ち受ける展開を今はだれも予想することができなかった。

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