第9話 毒耐性
街に来て3日目の朝、慌ただしく入口のドアを叩かれて私は目を覚ました。
「先生、急患だ。毒蛇にかまれた冒険者を連れてきたから見てくれ」
私は、急いで透視と望遠の魔法を併用して、毒がどこまで進行しているかを確認しながら、傷口をウォーターの魔法で洗っていく。ついでに毒素を排出するために患者には水を多量に摂取してもらう。
毒はそこまで体内の奥には混入していなかったため、私は重力魔法の応用で毒を血毎対外へ出していく。冒険者は貧血の状態となったが毒生成の応用で血液を作り出して貧血を予防すると同時に体内の毒を薄めていく。
ここまで治療を行ってやっと冒険者の顔色が元に戻ってきた。ここで私はいつもの契約書を差し出しサインを求める。
「俺は治療なんて頼んでねぇ」
と冒険者は大声を張り上げたが一緒にいた冒険者が張り手を食らわせると気絶してしまった。
「すまねぇ。先生。俺が代理人としてサインをするから契約書をそのように変更してくれぇか?」
「わかりました。少し待ってくださいね」
私は契約書に
【・代理人がサインを行うことを可能とすること
・以後、治療を受けた本人は佳代子から治療行為を受けることができないこと
・佳代子および佳代子周囲の人間に危害を加えようとする意志が発生した場合、神罰を受けること】
を追記した。
代理人の冒険者は契約書の追記部分を見ながら、苦笑いをしつつサインを行う。
その間にこの場所の周辺事情について聞いてみようかという軽い気持ちで話を始めた。
「この辺りには毒を持った魔物なんかが多くいるのですか?」
「それほど多くはねぇが毒性が強い蛇が多いんだ。だから毒耐性スキルを得られる前に死んじまうことが多いな。先生が治療できるか分からなかったが連れて来たおかげで助かったよ」
「毒耐性スキルの取得条件は判明していますか?」
「詳しくは分からねぇが弱い毒を体に打ち込んで徐々に強くしていくとスキルが芽生えるって話を聞いたことがあるな。そんな弱い毒を用意できるのは貴族くらいのもんだし、俺たち冒険者には縁遠い話ではあるんだがな」
私は毒生成をすることができるので、弱い毒なんて作り放題だと思った。
「では冒険者さん。弱毒を生成するので被検体になってくれる冒険者を探してきてくれませんか?報酬は今回の治療費と相殺という形で構いませんので」
「いや、それはこちらが貰いすぎだ。被検体にはこいつを差し出すから使ってやってくれ。それで毒耐性のスキルが得られるのであれば儲けもんだろ」
というわけで私は治療を行った冒険者の顔にウォーターで水をかけて無理やり起こした。
そして、治験を行うための契約書を作成して無理やりサインさせる。
こうして私は実験材料・・・もとい被験体を手に入れた。
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