第11話 教会と領主

事件は毒耐性Lv1を取得してから1週間後に起きた。あのバカ冒険者はこともあろうことかもう一度毒蛇に噛まれてしまった。付き添いの冒険者は私の所ではもう治療を受けられないことを知っていたため、教会へとバカ冒険者を連れて行った。


教会では、状態異常の程度を知るために鑑定を行うらしい。そして、その鑑定でバカ冒険者が毒耐性Lv1を持っていることが教会にばれてしまった。


バカ冒険者は治療を受けることができたが、軟禁されて毒耐性を得た情報を話すことを迫られたらしい。契約書には治療内容を話してはいけないなんて書かれていなかったため、教会にバレてしまった。


その日から教会の手のものが診療所にやってきては、


「毒を飲ませるなど神への冒涜である。直ちに止めなければ教会への不信として断罪する」


などと自分勝手なことを言ってきた。


ここで薬師ギルドと結んだ契約書の一部分【契約者相手に不利益を行いそうな場合には神罰をもってそれを阻止することを認めること】が発動した。


今回の場合は、不利益を起こしたのは私だと言えるのだがそれを止めることができない状態だ。そうして神罰の矛先が向いたのは教会であった。


神を祭っている街の教会に雷が落ち、教会が焼け落ちた。けが人は1人もいなかったが、寄りにもよって教会に被害が出るなど神罰だと多くの人の心に刻まれたため。教会は運営が立ち行かなくなってしまった。


もともといた教会の信者は街から離れ、教会本部へと戻っていく。その中ででっぷりと太り不摂生の塊だとしか思えない教会の神父だけが教会の再興に残されたらしい。


そんな有様のため、私に構う時間などあるわけもなく、今までため込んだ資金で新しく教会を立て直すこととなった。


ちなみに領主様はこの件に関しては一切口を出さずにいた。それどころか、毒耐性のスキルを得るために私の診療所まで来てしまった。


私は契約書に


【治療の内容を他者へ漏らさないこと】の一文を追加して領主様の三男へ毒耐性スキルが取得できるまで弱毒を飲んでもらった。


1月後、もはや弱毒とは言えないレベルの毒を飲み続ける領主家の三男は毒耐性Lv4まで育っていた。このころには私がスキル取得の手助けができることが領主様の中で確定したのだろう。長男と次男にも弱毒を飲ませるようになった。


この町は辺境の地ということで他国からの間者が紛れ込み、領主一家を毒殺しようとするケースが珍しくないらしい。そのため、一家は毒耐性Lv10まで取得したいようだ。


こうして、私は領主一家を診察する治療師として、街中に知れ渡ることとなった。


ちなみに毒耐性Lv10が一体どれほどの期間で取得できるのかは誰にも分っていない。

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