第3話 魔法2
修行の続きはその日のうちに行われた。
「まずは状態異常がどのような効果をもたらすのかを実体験してみなさい」
そういって、眠りの魔法で意識を刈り取られたり、麻痺の魔法で体の一部の感覚がなくなったりした。それ以外の状態異常は危険だからという理由で実験しなかった。
「どうかしら。何かに使えそう?」
「はい。とても役に立ちそうですがコントロールに難あり、といったところでしょうか」
「それは数をこなすしかないわよ。私から最後のアドバイスだけど怪我をした人の中にはお金を払えない人もいるわ。そういった人からは魔力の1割程度を譲渡してもらうようにしなさい。あなたの魔力量は少ないわ」
「そんなことが可能なのですか?」
「あなたには契約書があるじゃない。治療を生業とするならば必ず契約書を交わしてから行いなさい。その方がトラブルが減るはずよ」
「中には意識のない人を治療することもあると思うのですけれど」
「その場合は代理人にお願いしなさい。完全に1人の時は見捨てなさい。こういっては残酷に聞こえるかもしれないけれど、そういったことは少なくないはずだから」
私は助けられる命を見捨てることができるだろうか?と自問自答する。答えは出なかった。
「今日は休みなさい。明日近くの街へ送るわ。あと1人面倒を見てほしい子がいるからその子も明日紹介するわね。念話の魔法が使えるから、何かあれば私に念話を頼みなさい」
「分かりました。では明日、よろしくお願いします」
<ロジーナ視点>
今回の転移者はかなり素直な子だった。あれなら、この世界では長く生きることはできないだろう。というのが私の考えだ。
そんなことより、私はリクセンベルク王国へ貸与していた魔法士たちを叩き起こした。
「あんたたち、召喚魔法だけは使うなってあれほど言ったわよね。言い訳を聞いてあげるから全部吐きなさい」
その顔は佳代子の相手をしている時には見せなかった彼女の本性がにじみ出ている。
「それは、疫病を解決するために必要なことだと言われて・・・私の彼氏も疫病にかかってしまいましたし」
元気のない声で1人が話し出すと、周りの魔法士もうんうんと頷き始めた。
「つまり、あなたたちは修行に赴いたその先で彼氏を作って浮かれていたにもあげく、手駒にとられて召喚魔法を使ったと」
魔法士たちは全員下を向いた。
「はあ。あの国では疫病なんて発生していないわよ。一定の人間が魔力の乱れを引き起こしているだけ。王はそれを分かっていないし、魔力嵐が通り過ぎれば回復するわ。それよりも召喚魔法を使ったことで魔力嵐がよりひどくなるでしょうね」
リクセンベルク王国に派遣されていた魔法士たちは顔を青くしたとか。
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