おまけ短編2 お祝いですからっ! みんな集合~っ! その2
「いやまあ、英翔様に限った話ではないかと思うが……。確かに、俺が聞いた情報だと、英翔様の新シーンもあるらしい。俺達四人は口絵や挿絵もあるし――」
張宇がみなまで言わぬうちに、季白が感極まった声を上げる。
「英翔様の姿絵……っ! それは家宝にしなくてはいけませんねっ!」
「ああ、うん。確かにお前は家宝にしそうだな……」
もはや突っ込むのは諦めた様子で、張宇が呟く。きしし、と、からかうように笑ったのは安理だ。
「季白サンの場合、保存用、布教用、毎日拝む用と、複数冊取り揃えてそうっスよね~♪」
「当たり前ではないですかっ! 英翔様の凛々しく神々しいお姿を拝めるのですよっ!? 毎朝毎晩拝礼し、英翔様の素晴らしさを
「やめろ。そんなことなどされたくない」
英翔が本気で嫌そうに愛らしい顔をしかめる。季白が不可視の刃で刺されたようによろめいた。
「そ、そんな……っ! なんということをおっしゃるのですっ!? 英翔様のことを
「知らん。少なくともわたしは受け取る気はないぞ」
安理がぶっひゃっひゃ! と馬鹿笑いした。
「季白サンったらいつも以上に飛ばしてるっスね~♪ おまけ短編だからって、いつも以上に
「安理、何を言うのですっ!? わたしは常日頃から英翔様を賞賛し、
季白が憤然と言い返すと、安理がふたたび「ぶっひゃっひゃ!」と馬鹿笑いした。
「さっすが季白サン! 『呪われた龍にくちづけを』で一番ブレない男っスね!」
「当たり前ですっ! わたしの英翔様への忠誠心が揺らぐことなど、天地がひっくり返ってもあるはずがないでしょう!?」
「……季白の忠誠心の
英翔が愛らしい面輪にげんなりした表情を浮かべ、低い声で呟く。張宇が苦笑いを浮かべてとりなした。
「『呪われた龍にくちづけを』の書籍化に、さしもの季白も浮かれているのでしょう。大目に見てやってください。俺も、英翔様のご活躍が書籍になることに、喜びを抑えきれませんし」
張宇が
「張宇……。お前にそう言われると、
忠臣の言葉に、英翔が思わずといった様子で口元をほころばせる。張宇に加勢するように、明珠も思わず口を開いていた。
「活躍というなら、張宇さんだってそうじゃないですか! 書籍化にあたって加筆シーンもありましたし……っ!」
「へ~っ♪ 張宇サンったらやるじゃないっスか~♪」
いつの間にやら明珠の隣に移動していた安理が感心した声を上げる。
「ってゆーか……」
安理がふと何かに気づいたように眉をひそめる。
「今回の集まりも、声かけをしたのは張宇サンっスよね? 作者からひとりだけ情報を渡されてるっぽいっスし……」
きらり、と安理が鋭い視線を張宇に向ける。
「……もしや、秘蔵の甘味を食いしん坊な作者に
「そんなこと、するはずがないだろう!?」
全員の視線が集中した張宇が、心外だ! とばかりに声を上げる。
「確かに作者からこの集まりを設定するように命じられたのは俺だが、一巻の面子的に仕方がないだろう!? 主人である英翔様にお願いするわけにはいかないし、明珠だと初華様や遼淵殿に気後れするだろうし、季白は……」
ちらりと同僚に視線を向けた張宇が、広い肩を落として、はぁっと嘆息する。
「内容によっては、どんな暴走をするかわかりかねないし……」
張宇の言葉に、周康が「わかります! わかりますよっ、張宇殿……っ!」と言いたげにこくこくこくと何度も頷く。一方、名前を挙げられた初華と遼淵は、
「まあっ! わたくしが明珠からの誘いを断るなんて、そんなことありえませんわ!」
「愛しの君に呼ばれたんなら、どこだって行くに決まっているよ!」
と勢い込んで口を開く。
ちなみに、遼淵が言う『愛しの君』とは英翔のことだ。『蟲招術』の研究のこととなると寝食を忘れるくらい飲めり込む遼淵にとって、英翔は目下のところ一番興味深い研究対象らしい。
張宇の言葉に、季白は切れ長の目を怒らせて同僚を振り返る。
「失礼なっ! わたしはいつも、英翔様の
「しているだろう?」
「してるっスよね♪」
「してますわよ?」
「ん? 次する時は協力するよ! 愛しの君に関することだったらねっ!」
「あの、この質問は答えないといけませんか……?」
「す、すみませんっ! 私も周康さんと同じで、答えは保留でっ!」
英翔様と安理と初華、遼淵が間髪入れずに即答し、周康が遠慮がちに申し出る。明珠も周康に
「……ほらな」
はあぁっと、大きな身体からもう一度嘆息をこぼし、張宇が季白を見やる。
さすがに英翔達の言葉は否定しにくいのが、季白はぐぬぬぬぬ……っ! と悔しげに唇を噛みしめていた。
「ぶぷ――っ! さしもの季白サンも、英翔サマと初華サマには勝てないっスね♪」
吹き出した安理が、同意を求めるように明珠の肩に、ぽんっと手を置く。
「張宇サンも、皆の注意を集めて、いー仕事してくれたっスし……。――」
安理の声がやけに近くで聞こえたと思った瞬間。
「ひゃあっ!?」
明珠は、ぐいと後ろから安理に抱き寄せられていた。
とすりと背中が安理の固い胸板に当たる。
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