死の間際
「イエス様。僕は何を間違ったのでしょう」
足元にじわじわと拡がっていく鮮血を眺めながら、ダリアは独りごちた。
「兄を愛したこと? 逃げるように兄から離れたこと? 心当たりがありすぎます」
口の端が持ち上がった。こほっと咳をすれば、一筋の赤が顎を伝った。
「でも僕は、愛に挫折して、人生に敗北して己を殺したのではないような気がするんです。なんというか、もっと……」
片膝で体を支えきれなくなり、横になる。
「これが僕の愛なんです、イエス様……この鮮血が。兄には伝わらないだろうけど。でもいいんです。僕は愛に死ぬんですから」
キリスト像は静かにダリアを見下ろしていた。彼もまた、死ぬその瞬間を永遠に固定されていた。イエスも痛みを感じていただろう。
「初めてあなたの気持ちが分かった……」
薄れゆく意識の中で、ダリアは深い充足を感じていた。
「愛はこんなにも痛いんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます