ダイアローグ
俺はよくやった。よくやったよ。俺はもう死ぬしかなかった。これだけ頑張って、もう、頑張り尽くしたんだ。俺は実の兄を好きになった。ドームへの恋心は、誰にも知られてはいけなかった。俺だけが、彼への気持ちを強く強く抱え込んで内緒にしていた。もう、疲れたんだ。叶う見込みのない恋も、彼以外に生きがいのない人生も。彼だけが僕の光だった。彼だけが俺を認めてくれた。彼だけが……僕の全てだった。
狭いところ、暗いところが好きだった。だから、修道院は落ち着くところだった。あの後、みんな怒ったろうな。それか……悲しんでくれたか。それとも、内気な僕のことを、誰もがスルーしたかもしれない。でもやっぱり、礼拝堂で人が死ぬのは、誰にとってもショッキングなことに違いない。悪いことをしたな。
刃物を胸に貫くのは気持ちよかった。人ならぬ恋をした自分にぴったりの死に方だと思った。俺の激情。それが胸から迸り出たんだと思う。
俺の人生は果たして記述されるに値するものだったのだろうか?……分からない。でも、誰も俺の人生を振り返らないのだとしたら、俺と、そして君だけは覚えておいてほしいんだ。俺も確かに生きていたのだと。
俺には友達はいなかった。いなかったんだ。誰も陰気な顔をした痩身の少年なんて好きにならなかったろう。むしろいじめられていたし。でもそれも仕方のないことだったんだ。俺の恋心は許されざるものだったから。それを察知したんだろう、彼らは。
自殺した文士が昔から好きだった。今思えば、同族に惹かれたんだろうと思う。どうして文士は自殺しやすいんだろうな。小さな自分に絶望して死ぬんだろう。叶えたいのに、どうしても叶わない。その葛藤に耐えきれなくなるとか。……これは俺のことか。
君の人生は、ドームに出会うためにあるんだ。どこかに必ずドームはいる。既婚者かもしれない。でも、それでも君は彼をものにしなくちゃならない。それが君の生まれてきた目的なんだから。彼と添い遂げること。それだけを考えてほしい。
仕事?……ああ、僕は修道士見習いだったけど、君はもう成人してるんだもんね。確かに、仕事のことを考えなきゃね。君は物語を作る人になるよ。そのために努力してほしい。その先にドームはいる。だから安心して。それまでは、何か職に就いて繋いでほしい。
自殺、陰惨、絶望、もどかしさ、狂しさ、これらが僕を構成する言葉だ。君はこれを書き換えることができる。君はどう生きたい?それを教えてほしい。僕は君の力になりたい。このまま終わっていいの?いいわけない。そうだよね。華やか、優しさ、きらめき、麗しさ、そういうものに囲まれて生きていきたい。そうだよね。君は女の子だから。いいよ。叶えてあげる。その代わり、ドームを見つけて。それが僕の悲願なんだ。お願い。……ありがとう。これで僕も安心できる。ありがとう。本当に。……へへ、お互い様だね。
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