兄の回想

 俺の弟はひ弱な奴だった。いつも俺の後にひっついて、遊びも運動も、自分からはやらなかった。そんな弟が可愛くて、俺はよく弟にかまっていた気がする。でも、時にはうっとおしくなって、邪険に扱ってしまうこともあった。

 弟はその代わりに感受性が高くて、詩や音楽の才能があった。絵も上手かった。何かを作ったり奏でたりしたあと、弟は恥ずかしそうに照れていた。俺はそんなダリアが好きで……できればずっとそばにいてやりたかった。

 なぜ弟は死んでしまったのだろう。俺が悪かったのかもしれない。もっと弟の話を聞いてやれば。もっと心を通わせていたら。……結果は違ったかもしれない。俺は弟のことが好きだった。恋愛的な意味でだ。兄弟なのに変だろう?この気持ちは、弟の存在を認識してからずっとあった。可愛くてかわいくて、食べてしまいたいと思ったことも何度もある。

 俺は俳優を目指していた。しかし、弟のいない今、何をしても空虚だ。生きている意味を完全に失ってしまった。……どこだろう、ここは。ああ、近所の橋の上か。いつの間に……あっ。ダリアだ。ダリアが川の上にいる。ダリア……。


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