1-21 <通天閣からの景色(4)>
10月後半の、金曜日の午後2時前。
よく晴れた日だ。
少し肌寒い。
やっと秋が来た感じだ。
岡ちゃんが話していた福祉施設は、大阪市内、東エリア側の某区にあった。
岡ちゃんが七未、マキを連れてその施設にやって来た。
福祉施設は、マキが想像していたよりまあまあ大きめだった。
全体真っ白、プレハブの中規模程度の倉庫のような外観だったが、比較的新しい建築と見え、古びた感じはなかった。
建物の表側に、それほど大きくない木製の看板で
「特定非営利活動法人 オアシス」
と掲げられている。
七未が無言で施設の建物をゆっくりと見上げた。
その表情は、あいかわらず少しぼーっとしているようだったが、期待半分、不安半分といった感じに見える。
マキはそんな七未の顔を見ながら、少々不安げな様子だ。
「オアシス・・・。
あたしの好きなバンドと同じ名前なんや。
ラッキーなんかな・・・」
七未がつぶやくように言う。
マキはそれを聞いて、少しほっとしたように微笑んだ。
「そやね。
幸先ええかな」
岡ちゃんも、少々冗談めいてそう言うと、ニコッと笑う。
七未が岡ちゃんを、そしてマキを見てうなずいた。
「オープンしたのは2006年だったかな。
まあ、こういう施設としては新しいほうかも。
生活訓練といって、依存症を持ってる人がその依存しているもの、つまり薬とかアルコールとかから、少しずつ離れていけるように支援をすることがメインの目的やね。
たとえば、ほかの利用者さんと過ごすことで、おたがいに自分のことや相手のことをよく理解していったりとか、食事をいっしょに作ったりとか。
それと、就労支援、仕事に就くための訓練もできる。
正式には「生活支援」「就労継続支援B型」「就労定着支援」の三つの機能を持ってる事業所ということになるんやけど。
依存症になった人の場合、以前は仕事を持っていたけど、依存症のために辞めざるを得ない状況になってしまった人が多くいる。
そやから、そういう人にはまた仕事に就けるように、この施設の中で実際の仕事に近い内容の作業をする、などの訓練をすることができるということや」
「就労継続支援B型は、あたしが夏に見学しに行ったところと同じですね」
マキが言った。
「ああ、そうやね。
マキちゃんはゼミでB型に行って、そこでDJもやってきたんやったな?
ええな。
そういうのはええことや」
「はい」
マキはちょっとはにかんだように笑って答えた。
七未もちょっと微笑んで、
「かっこいいですよね、マキちゃん。
どこでも人気者やし」
とあこがれるようにマキを見た。
マキは、
「いやいやいや!
そんなん、恥ずかしいわ」
頬を赤らめながら、両手を広げて否定するように振る。
「いや、ええことや。
えー、で、訓練を受けた結果、仕事に就くことができた後も、その人が依存症の症状が再発して仕事ができなくなったりすることのないように、一定の期間、専門の知識を持った職員さんが定期的に会って面談してくれる。
そうすることで、悩みや困っていることがないかどうか確認して、それに応じたサポートをしてくれる。
これが「就労定着支援」というやつや」
「へえ、仕事に就いた後もフォローしてくれる、ってことなんですね」
七未が少し感心したように言った。
マキはそれを見て、あ、と思った。
マキは社会福祉を専攻しているから、岡ちゃんの説明の内容や、話の中に出てくる施設の名称にも聞きなれたものが多い。
しかし、英文学専攻の七未にとって、こうしたものはほとんどなじみのない未知の世界だ。
おそらく初めて聞く話ばかりだろう。
七未はときどき不思議そうに首をかしげたり、目をパチパチとまばたきして、岡ちゃんの説明を聞いている。
マキはその様子を見ながら、頭の中でうっすらと思う。
・・・そうなんよな。
病気や障がいのある人に対する支援って、いつもいちばん必要としている人に届いてないもんなんよな・・・。
「・・・とまあ、能書きはこれくらいにして、中入ろ。
職員さんも待っててくれてるはずや」
岡ちゃんがそう言って、施設のドアを開けた。
ドアは建物の左端にある。
プレハブ小屋でよく見かけるような、アルミ製と思われる銀色のドアだ。
そこを開けると、中はけっこう広い空間になっていた。
三人は中に入った。
「岡ちゃん、いらっしゃい!
お待ちしておりましたよ!」
明るい声が聞こえた。
岡ちゃんと同年代であろうと思われる男性と、30代ぐらいの女性、二人が目の前に立っていた。
「あー、中やん、ひさしぶりやな。
元気にしとったかー?」
岡ちゃんは笑顔でその男性に近づいて握手を求めた。
どうやら、この男性が岡ちゃんの友人の職員らしい。
男性は、ベージュのフランネルシャツの上にネイビーのフロントモックカーディガンを着て、下はライトブルーのデニムを穿いている。
身長は175cmくらいか。
そのファッションのせいもあって若く見える。
顔かたちは細い顎、少し浅黒く日焼けした肌。
スポーティーな感じだし、そこそこハンサムな風貌といえる。
「まあぼちぼちやけどな。
岡ちゃんとこはどう?
たけるくんとか、元気にしとる?」
「ああ、たけるくんは元気や。
事業所にもだいぶ慣れてきて、今や利用者のムードメーカー的存在や。
ほんま、成長しよったわ、彼は」
「へえ。
あの静かでおとなしかったたけるくんがなあ。
でも、ええことや」
「そう、ええことや」
そう言って、二人で、わっははは、と笑う。
その様子を見ていて、マキは思った。
男友達、って感じやな・・・。
なんかええな。
七未は、そんな彼らの談笑する様子を、ただ突っ立ってぼんやりと眺めている。
「このお二人が、電話でおっしゃってた学生さんね?」
女性が声をかけた。
彼女は黒髪、ダークグリーンと白の長袖ボーダーシャツの上に、ライトイエローのカジュアルジャケット。
こちらは紺のデニム。
背の高さは165cmほどだろうか。
体格はちょうどよい感じで、健康そうな肌の色をしている。
よく見ると、指のネイルに青、ピンク、グレーのカラー。
おだやかそうに見える雰囲気だが、まじめでしっかりしていそうだ。
そして明るく天真爛漫そう、笑顔を絶やさない。
岡ちゃんが言った。
「そうですわ。
こちらが杉浦七未さん。
難波大の二年生」
「こんにちは。
杉浦七未といいます。
きょうはよろしくお願いします」
男性があいさつを返した。
「こんにちは。
ぼくは中島といいます。
この事業所のサービス管理責任者です。
こちらこそ、よろしくお願いします」
そして女性も自己紹介した。
「こんにちは。
わたしは職員の若宮といいます。
利用者のみなさんの回復を助けたり、生活上のサポートをする立場です。
こちらこそ、よろしくお願いします。
これから事業所の中をひととおり案内していきますけど、質問とかあったら遠慮なく聞いてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
七未はゆっくりと頭を下げた。
岡ちゃんが続けて紹介した。
「そしてこちらは森本真希さん、同じく難波大の学生で杉浦さんの友人です。
いま大学で福祉を勉強してます。
DJをやらはるんで、まあぼくとはDJ仲間ということになりますわ。
きょうは、杉浦さんの友人として付き添いということと、福祉の勉強の一環で見学もかねて」
「はい、森本です。
今回、見学ということでごいっしょさせていただきます。
よろしくお願いします」
「ああ、あなたがDJやらはるかたなんですね。
うわー、すごいわあ。
で、福祉の仕事に興味があるのね?」
「はい。
今、大学のゼミで社会福祉論というのを取ってまして。
卒業したら社会福祉士の資格を取って、障害者福祉関連の仕事をしたいな、と考えているところです」
そう答えながらマキは、職員二人のプロっぽさ感というか、ある種、堂々とした雰囲気に少々け押されて、心の中で思った。
・・・あたしみたいなんが、こういう世界でほんとに仕事やっていけるんかいな・・・。
自信が少しなくなってきた。
そんなマキの気持ちが表情にも出ていたのか、岡ちゃんがその様子をすばやく悟ったように、
「マキちゃん、だいじょうぶや。
この二人だって、最初からこんな今のようにプロやったわけやない。
この仕事に入ったばっかりのときは、慣れなくておろおろしてたもんや、あっはっは」
そう言うと中島さんが、
「おーい岡ちゃん、そんな過去の黒歴史は話さんといて!」
若宮さんも、
「そうですよ、岡ちゃん、恥ずかしいわ」
二人はそう言って笑った。
でも、今や二人ともプロとして立派に成長している。
そんな自信に裏打ちされた笑顔のように、マキには見えた。
マキはその二人の笑顔がまぶしかった。
うらやましくも思った。
こんなふうに、あたしもいつかなれるかな・・・。
なりたいな・・・。
「さて、それじゃあ事業所の中を案内しますね。
利用者のみなさんは2階のミーティングルームにいます。
今は午前のミーティングをやってるんだけど、これは参加するみなさんが、自分たちの依存症や、経験したこと、困っていることなどを話して、みんなで共有するものです。
自分のことをみんなに共有することで、同じような経験や立場が自分一人ではない、っていうことをお互いに知って、またほかの人の依存症を理解したり、自分の症状もより理解することができるようになったりします。
それが、その依存症から少しずつ脱していく一歩になる。
と、いうのがミーティングの目的ね」
若宮さんが説明した。
中島さんと若宮さんが先導して、三人を2階に続く階段へと案内した。
一人分が通れるくらいのせまい幅の階段は、普通の住宅と同じようなものだ。
そこを中島さん、若宮さん、七未、マキ、そして岡ちゃんの順で一列になって上がっていく。
途中で直角に曲がる階段を上がりきると、両側にいくつかのドアがそれぞれ3つずつ並んだ廊下にたどり着いた。
「ここは、この施設の利用者のみなさんが過ごす時間がいちばん長い場所かしら。
ミーティングルームが三つ、休憩室が男性用と女性用が一つずつ、そして作業室があります。
順々に説明していきますね」
若宮さんが手慣れた感じで説明する。
ここにやってきたであろう依存症の当事者、もしくは家族の人たち、そして医療や福祉関連の人たち・・・。
彼らを相手に、もう何十回となく説明をしてきたのだろう。
七未はあいかわらず無表情だ。
ポーっとした様子で突っ立っている。
説明を聴いているのか聴いていないのか、よくわからない。
一見そう見えた。
しかし、明らかに興味を示している。
マキは、七未の目の色がわずかに輝きだすのを見てそう思った。
中島さんが廊下の右側、いちばん手前の部屋のドアを開けた。
その中は、長テーブルの両側に椅子がたくさん並べられた、奥まで長く続く部屋になっていた。
そこに、全部で7,8人ほどの男性、女性たちがいて話し合っている。
年齢は20代から50代くらいだろうか、さまざまだ。
部屋のいちばん奥にはサイドボードが置かれていて、ガラス戸の中に入っているのはおそらく湯飲み茶碗やマグカップだろう。
中の人たちは、いっせいにこちらを見た。
職員二人とともにいる七未とマキたちの姿を認めて、
「こんにちはー」
と声をそろえ、ちょこんとお辞儀をした。
そしてすぐ、また彼らたちの会話にもどっていった。
若宮さんが言った。
「ここが、この施設の中でいちばん大きなミーティングルームです。
ここでは、ミーティングを毎日午前、午後とそれぞれやっています。
ミーティングは、依存症を持つかたが回復していくために必ず必要なものなんですよ」
続けて中島さんが説明する。
「ミーティングは、当事者のかたがたが、自分の体験や感じたことを話して共有する場です。
そのことで、ほかの人も共通する経験をしていることを知ったり、新たな気づきを得たりする。
そういう経験、気づきの共有を増やしていくことで少しずつ回復につながっていくんです。
ここは、そういうことをするための部屋です」
そう言いながら中島さんは、静かに部屋のドアを閉めた。
それまで黙っていた七未が、
「・・・あの、お聞きしてもいいですか?」
と声を発した。
中島さんが応じた。
「もちろん、いいですよ。
どんなことでも。
なんでしょう?」
七未は尋ねた。
「ほかの依存症を持っている人といっしょにミーティングすることが、どうして回復につながるんですか?」
中島さんは、うんうん、という感じにうなずいて、少しかみしめるようにしていた。
そして、
「そうですよね。
なんでほかの当事者さんといっしょにミーティングすることが回復につながっていくのか、わからないですよね。
そう思われるのが普通だと思います」
と、七未にまじめに、しかしやさしさをたたえた笑顔で言った。
七未はまた少し首をかしげて、不思議そうな表情でいる。
中島さんはその七未の表情を見ながら、言葉を選ぶようにゆっくりと話した。
「依存症を持っている人には、みんななにか、依存症になった原因があります。
その原因に気づき、回復につなげていくまでを一人ですることは、かんたんなことではありません。
だけど、同じように依存症を抱えているほかの人といっしょなら、それができる可能性が高まります。
なぜならば、ほかの当事者さんの経験や思っていること、感じていることを聴くことで、自分にもある依存症の原因に気づくことができるようになる。
・・・そういうことがあるからなんです」
七未の目の色が、表情がわずかに動いた。
マキもそれを見逃さなかった。
「依存症の原因というのは多くの場合、その人の今置かれている状況から来る『生きづらさ』から来ています。
その『生きづらさ』がなにかということに、ほかの依存症を持っているかたの体験を聴くことをとおして、気づいていくんですね。
話している人の『生きづらさ』。
そして、その人の語る『生きづらさ』を通じて、自分が感じているけど、はっきり意識できていない自分の『生きづらさ』に気づくんです」
七未はそれ以上表情を変えなかったけれど、それでもなにか感じているように見えた。
七未の、いつもはどんよりと濁っている目の色が、少しずつではあるがかすかに光を帯びてきている。
マキはそう感じた。
「あたしも、もしここに通ったらそんなふうに気づくことができるんでしょうか。
自分の『生きづらさ』に・・・」
「気づけますよ。
必ず」
中島さんが、静かに、しかし強く確信するような口調でそう答えた。
若宮さんも笑顔をたたえてうなずいた。
それから職員の二人は、七未とマキたちをほかの部屋へと順々に案内していった。
七未はときどき二人に質問していた。
ここを昼間に利用する場合の過ごし方、全体でどんな年齢層・性別の人たちが利用しているか、みんなどんな依存症に悩まされているのか・・・。
そして、職員たちの言葉の意味がわからないときは、マキにも尋ねた。
マキは、福祉の知識を持っていない七未にもわかりやすいように言葉を選んで説明した。
「森本さんはとてもよく理解してらっしゃるわあ」
「本当に。
すばらしいですね」
職員二人がそう言うので、マキは照れた。
「いやいやそんな・・・。
まだまだです」
施設案内がひととおり終わると、4人はふたたび1階に降りてきて応接室に入った。
七未とマキは奥のソファに通されて座った。
中島さんと若宮さんは、七未やマキの真向かいのソファに座り、二人をやさしく眺めた。
中島さんが聞いた。
「杉浦さん、どうでしたか?感想は。
ほかにご質問があれば、どうぞ遠慮なくおっしゃってください」
七未は膝の上で両指を組んで、手のひら側を上にして手遊びのように指を動かしていた。
その両指を見ながら、頭の中を整理しているようだった。
マキは七未の顔を見た。
不安やさまざまな感情はまだあるが、でもまちがいなく関心は持ち始めている。
しかし、まだ迷ってもいるようだった。
マキが七未になにか言おうとしたそのとき、七未はゆっくりと口を開き始めた。
「・・・えっと、正直まだわからないんですけど・・・。
あ、説明いただいたことはだいたいわかったと思います。
そのことやなくて、あたしがここを利用させていただいたほうがええのか、それがまだわからないんです。
・・・でも、気にはなってます。
ここで今すぐご返事はできないけど、でも利用するという選択肢もあるのかな、って気にはなりました」
マキは明るい表情になって七未を見つめた。
中島さん、若宮さんもほっとしたような笑顔になって、
「ええ、もちろん、今すぐご返事しなくてもだいじょうぶですよ。
ゆっくり考えてからでけっこうです」
若宮さんがいたわるように声をかけた。
中島さんも、
「若宮の言うとおりです。
ご利用するか、しないかは、杉浦さんご自身の自由ですから。
どちらを選択されても、わたしたちは杉浦さんのご意志を尊重しますので」
七未はそれを聞くと、こちらもほっとしたように無言でうなずいた。
マキも思わずうなずいた。
「七未ちゃん、ほなら、きょうはこのへんでええか?」
マキが声をかけると、七未はふたたび、うん、というように首を縦に振った。
中島さんが七未とマキに言った。
「それではお二人とも、お疲れさまでした。
先ほどお渡しした名刺に電話番号とメールアドレスが載ってますので、わからないこと、お聞きになりたいことがあったら、いつでもご連絡ください」
二人は礼を言って、ソファから立った。
岡ちゃんが中島さん、若宮さんに声をかけた。
「中やん、若宮さん、きょうはほんまありがとう。
ぼくもひさしぶりに来て勉強になったわ。
またそのうち寄らせてもらいます」
中島さんが応じた。
「岡ちゃん、ぼくらのほうこそ。
とてもすばらしいお二人に会わせてくれてありがとう。
また寄ってください。
あ、また今度一杯飲もうよ」
「あ、そやな、それが先やな。
あっはっは」
中島さん、若宮さんに見送られながら、七未とマキ、岡ちゃんは事業所を後にした。
岡ちゃんは、次に別の福祉事務所に行く予定があるからと言って、二人と別れて先に行った。
駅までの道すがら、七未がマキにぽつんと言った。
「・・・ようわからんけど・・・。
施設、なんかいい感じやった」
マキは七未をいつくしむようなまなざしで見ると、ひとこと返事した。
「うん」
七未は続けて言った。
「来てよかったかな、たぶん」
「そう思うた?
よかったわあ」
マキは七未を見て笑った。
七未も、不器用に笑い返した。
「・・・でも、利用するかどうかは、まだわかんないかな・・・」
「うん。
ええよ、だいじょうぶ。
中島さんが言うてくれたように、利用するのもしないのも、七未ちゃんの自由やから」
「・・・うん、でも、マキちゃんも岡ちゃんも、あたしのためにいろいろ考えてやってくれて、ここを紹介してくれたんやし・・・。
・・・あたしも考えてみるよ。
少し時間をくれるかな」
「ええよ、もちろん!」
マキは笑顔で七未に応えた。
七未は、そんなマキの顔を見て、ふたたびぎごちない笑顔を返した。
「・・・それと、マキちゃんとユウタくん、岡ちゃんのDJ、楽しみにしてる」
「あ、それがあったわ!
そっちもがんばるわ!
ありがと!」
マキは忘れていたことを言われて、素っ頓狂に叫んだ。
秋の昼下がり。
斜めの日差しが心地よかった。
七未は少し機嫌がよくなったようだ。
二人はとりとめもなく、音楽のこと、大学の授業のこと、アートのことなど、いろいろなことを話しながら、駅までの道を歩いた。
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