第031話 顕 現(ミドルネーム)
いつものように
男性といっても、彼は人間ではありません。この宇宙の大地を
「……そんなところに隠れてないで、そろそろ顔を見せてくれないか?」
こちらのほうを仰ぎ見ながら、彼は懐かしい声で言いました。
「いるんだろう? そこに」
彼の声に呼応して、二人の少女が姿を
「いや、呼んだのは君たちではない」
顔色ひとつ変えずに、彼は言い放ちました。せっかく出てきた彼女たちが可哀そうじゃないですか。
少女たちは、がっかりした様子ですぐに消えてしまいました。呼ばれたのは、やはり私なのですね。わかっていました。やむをえません。出ていくことにいたしましょう。
私はゆっくりと形を変え、やがて音もなく着地しました。スカートの
「久しぶりだね、マーリア」
ヴィオレが目を細めながら微笑みました。竜族は、なぜか他人をミドルネームで呼びます。それが彼らの風習なのでしょうか? そういえば、どうでもいいことですけど、あの
『相変わらずお若いですのね、ヴィオレ・ヴァル・ヴォレイグ』
彼がくすりと笑いました。
「生まれたときからこの姿だからね。歳をとらない代償に、転生しても
彼はひと呼吸すると、
「そんなことより、驚いたよ、マーリア。なんだい、あの
『決まっているじゃないですか。私をモデルに造ったからですよ』
「なぜ起動しない?」
わざとらしい
『わかっていることをわざわざ確かめようとするのは、
私はため息をつくと、
『私がここにいるからです』
それを聞いて、ヴィオレは軽く
「では、あのファルタークという青年はいったい何者なんだ?」
『私たちのご主人様です』
「……それがわからない。彼はただの人間なのだろう?」
『
私は微笑みます。本当に
「この
いつしか彼は、らしくもなく真剣な表情になっていました。
「もう一度、
『私たちのご主人様です。何度訊かれても、答は変わりませんよ』
彼は苦笑すると、
「わかったよ、マーリア。とりあえずはそういうことにしておこう」
そう言い残して、ヴィオレは私の前から去っていきました。
……いいえ、貴方は何もわかっていません。
私たちという言葉の中に自分たちは含まれていないと、どうして貴方は考えるのですか?
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