第030話 回 収(ピンチヒッター)
そのひとつを指揮するのは、連隊長でもあるエレオノーラ・ヴィルダ少佐。残りの三つは、アレクサンドラ、ビルギット、エヴェリーナと名付けられた三人の戦闘メイドが隊長だ。彼女たちの階級は大尉らしい。残り三七人のうち、小隊長を兼ねる一〇人が中尉で、あとの全員を少尉ということにしたそうだ。個々の能力はほぼ
エルファイヴというファミリーネームをもつ四〇人の戦闘メイドは、ふだんはマルガたち文官メイドと同じようなメイド服を着ている。違うのは、
もちろん、
ラースガルドの
最初は俺が隊に参加するつもりだったんだけど、
「司令官が最前線に出てどうするんだ、ファルターク。お前はラースガルドで指揮を
と、部下にこっぴどく叱られた。ちなみに、俺は大佐ということになっているらしい。中尉で除隊したはずなのに、大した出世だ。
そうして俺の代わりと称して、ミランダ先輩が
整備工場の一角で、三人の
「
そう
「赤は『最強』を示す色ですから」
俺は苦笑するしかなかった。
「かまわないけど、国の仕事はいいんですか?」
「問題ない。わがアルドナリスには優秀な
……頼りになる
「まあ、ここは若い女性ばかりですから、その点さえ配慮してもらえれば、船内では自由に行動してもらってかまいません」
冗談めかして言うと、
「こう見えても私には奥さんがいるんでね、他の女性に興味はないよ。
と
「むろん、私が浮気しなかったことを証明してもらうためだよ」
そう言うわりには、もう五〇〇年ほど会っていないそうだ。別居の原因はなんだろう。それとも、もともとそういう生活をしているのかな。返答はなかった。
ヴィオレの正体が露呈したあの会談の後、アルドナリス聖皇国の
墓碑名は《ルナマリア・
「遺族が望んでいないので
という指示もあわせておこなわれている。
一〇日後、アークウェット商会が発注した真紅の新造宇宙船の一方に、母親の柩が
ルージュコメットⅣには、アークウェット商会の常駐
到着した当日に、俺もいちおう全員と挨拶だけは交わしたけど、いまのところ接点はそれだけだ。ミランダ先輩の話によると、
彼らの世話はセラフィーナと、マルヴィナをはじめとする三人の文官メイドがやってくれている。迷子になると困るので、自分たちの部屋と商会のオフィス、それにセラフィーナが許可した場所以外への立ち入りは、現在のところ禁止している。可能性は低いけど、ヴィオレとばったり会ったとき、彼の顔を知っている
回収された母親――ルナマリア・レーンの
一五年前に別れたときと同じく、二〇代の前半にも見える容姿。俺と同じ
「きれいなお母さまだな」
俺の肩に手を置いたミランダ先輩が、小さな声でそう言った。
ルナマリアの
『『……製造されてからも長い間動きだしませんでした。もしかしたら、今回もそうなのかもしれません』』
くすんだ金色の髪をした双子の少女――ユグド=ラシルが俺を
ルナマリアの身体は、そのままタンクベッドで保管することになった。回収できただけでも良しとしよう。ヴィオレには、心からの感謝を伝えた。
感傷にひたる間もなく、俺はラースガルドに出発を指示した。
「――大丈夫ですよ、先輩。ボタンを押しても発射しないなんて、どこかの三流アニメみたいなコトは起こりませんから」
エレオノーラ、根拠のない自信でフラグを立てるのはやめてほしい。
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