第024話 食 卓(ワイングラス)
ミランダ先輩の機嫌を直してもらうのに、一時間ほどが必要だった。
場所は第〇〇四
説明した内容はというと、実際のところは先日セラフィーナに告げたことをくり返すしかなかった。けれど話しながら、なんで俺がこんな
「話としてはわかった。だが、納得はできん。だいたいファルターク、いったいなんでメイド服なんだ? その
……憎めない
セラフィーナを救助した経緯についても二人に話し、途中から本人とマルヴィナにも合流してもらった。小惑星リューデニアで見つかった金塊の真相が判明したことにエレオノーラは大満足な様子で、
「私が生きてるうちに謎が解けてよかったです。あんな
「そうですよね。事実は小説よりも奇なり、です」
「ふん、私のルージュコメットⅡに比べたら
と、ヘンなところでマウントをとったのはミランダ先輩だ。あの派手な宇宙船は、いったい
トランスキャット
俺に生身の右手があること。
この二つについて説明するには、
「でも、便利ですよね、その装置」
これに食いついたのもエレオノーラだった。
「だって、新品になるんでしょ? 私も
そこまで言ったところで、リバース・システムが人体に引き起こす副作用に気づいたらしい。
「ちょっと待って。レーン先輩、不死身になっちゃったんですか?」
「
「何?
落ち着いてください、先輩。美容器具じゃないんだから。
「だがな、ファルターク。回りをよく見てみろ。今、この場にいる人間で……年老いていくのは私だけなんだぞ」
「
「私より二〇〇も歳上のくせして、私よりもお肌ツルツルな
それっきり、ミランダ先輩は何も言わなくなってしまった。
その夜は
ルージュコメットⅡに積んできた食材を、ミランダ先輩が提供してくれたことが
「お前から連絡が来るまでどの程度の船旅になるか判らなかったから、先行して用意しているうちにいろいろと増えてしまったんだ。あまり
という先輩の言葉にマルガの
「アルコールも何ダースかあるぞ。よし、今夜は
てなわけで、俺の部屋の
ダイニングのテーブルには、色とりどりの料理がならべられた。トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ、鯛とレモンのカルパッチョ、ローストチキンやローストビーフ、シーフードのパエリアといった具合だ。サンドウィッチももちろんある。生ハムとレタスをはさんだものだ。
これらの料理は、すべて文官メイドたちが用意した。短時間でここまでのものを作る
「
そう
その
「――ねえ、レーン先輩」
ワイングラスをもったエレオノーラが、突然話しかけてきた。
「ん、なんだ?」
「私、セラちゃんと一緒に住んれもいいれすかぁ?」
かなり
「セラがいいならかまわないけど、住むってどういうことだ?」
「住むっれいったら、住むっれころれす。仕事やめちゃっらし、ここれ
「いいのか、それで?」
「かまいませんよ。セラひゃんをひろりにするわけにもいきませんし」
「ありがとうございます」
と、セラフィーナも同調する。そういうことなら……まあ、しかたがないよな。
「一緒の部屋でいいのか、セラ?」
「もちろんです。マルヴィナさんも一緒に三人で、楽しくやっていきます」
名前を呼ばれて、なんだかマルヴィナも嬉しそうだ。ちなみに、同じ薄桜色の髪をした二人の
「……どうした? 何か言いたそうだな、ファルターク」
「もしかして先輩も――」
「当たり前だ。若い
ミランダ先輩が、グラスに残っていたワインを一気に呑みほした。
「だけど、たしか伯父さんがご病気では?」
「ああ、それはれすれぇ――」
「黙れエレオノーラ」
何か言いかけた後輩を先輩が制した。
「どうしたんです?」
「何でもない。伯父も問題ない。だから私もここに住む。嫌か、ファルターク?」
「いや、それはないですけど……」
この先、食材とかラースガルドで生産できない物資の調達も必要になってくるので、住んでくれるのはありがたい。だけど、本当にそれでいいのか? おそらくは世捨て人みたいな
「……それもいいじゃないか。なんとなく面白そうだ」
「それじゃ、先輩も住む部屋を決めないと――」
「ファルターク。不老になったのに、耳だけは
「え?」
「ここに住むと何度も言っただろう。使っていない寝室も、いくつかあるんだろう?」
ここって、ここ?
「当然だ。マルガレーテだって、ここに住んでいるのだからな」
ぺきっ。
隣のマルガの手の中で、ワイングラスの
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