第019話 信 号(ライフ・ポッド)
掘削した二〇〇〇トンの
俺もその時間、着陸した作業船の下部にあるキャタピラを微妙に調整しながら、切り崩す鉱山とにらめっこしている。鉱山がすぐに見つかって、しかも露天掘りができる場所だったことは、幸運と言うしかないだろう。これが地中深く掘らないとダメな場所だったら、所要時間は数倍に
二日目の作業が終わってマルガにそう言ったら、
「前回もここで採掘していますから、そういう場所であることは存じておりました」
知っていたなら
「お尋ねくださいませんでしたので……」
ん? なんか俺に対して不満がありそうだな。
「そのようなことはございません。ただ、作業が終わられたらすぐにご主人様はお休みになってしまわれるので、その……少々暇を持て
「そう言われてもなあ……」
ここと小惑星リューデニアを往復する時間、それに採掘した鉱石をダクトに放り込む時間を加えると、一日の作業に最低でも一八時間はかかるんだ。あとは食べてシャワーを浴びて寝るだけの時間しか、俺には残っていない。一五時間の労働で体力も消耗しているから、ベッドに入ったとたん、朝までぐっすりだ。マルガの相手をしている余裕はない。
「ですから、これは
いやいや、言っているだろう。というか、いままでにもそんなコトをした
まさかマルガ、俺が寝ている間にヘンなコトしてないよな?
「…………」
おい、頼むからそこは否定しろ。
話が別の方向にいってしまったので、俺は意識的に話題を変えた。
「それにしても、これだけの規模の
「
「ラースガルドでは造れないのか?」
「もちろん可能でございます。ただし――」
造るにはエネルギー源となる
そうして迎えた作業最終日。
残る採掘量は一〇〇〇トンだったので、作業自体は八時間で完了した。よし、あとは帰還するだけだと、操縦していた
『ご主人様、警戒用に飛行させていた
「生命反応? 人間のものか?」
『その可能性が高いと思われます。ただし微弱なので、人間であれば意識不明の状態ではないかと推測されます。個数は一体。場所は、ご主人様の現在位置から一〇時の方向に約四〇〇〇キロメートルでございます』
無人のこの小惑星に人間がいて、しかも意識不明。考えられるのは、事故か遭難か。四〇〇〇キロなら、
「調べてみる。作業船を
『可能です』
「なら、回収後にラースガルドを捕捉ポイントの上空まで移動させてくれ。調査後、
『了解いたしました。ポイント上空、高度一万五〇〇〇メートルで待機します。お気をつけください』
「わかった。ポイントの座標を転送してくれ」
そう言って通信を切る。操縦席の前方にある小型パネルに座標が光点として写し出されると、俺は
地表から一〇〇メートルほどの高さを、音速の三倍のスピードで飛ぶ。恐怖はない。
一時間半後、俺はそのポイントで一台の
少し壊れているが、生命維持装置は問題なく機能していた。
全長六メートル、幅四メートル、高さ三メートルほどの、角のとれた直方体をした
窓がないので、
磁石のついた牽引ロープを
マルガ、グッジョブ。あとで頭を
『ご主人様、さきほど三〇〇光秒ほど先で
俺たちを見つけたのか、それともこの
「マルガ。レゴラス国の巡航艦と仮定して、主砲の射程圏内にラースガルドが入るまでの時間は?」
『一二〇分です』
「
『完了しております』
「よし。俺たちが格納庫に入った時点で
『了解いたしました』
「代金の支払いは?」
『そちらも完了しております。ここに移動する間に、格納庫から投下しておきました』
……小惑星リューデニアで大量の金塊が発見されたというニュースが全宇宙に流れたのは、それから二日後のことだった。
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