第016話 手 記(アヴェンジャー)
私の名前はセラ。セラフィーナ・
ラトゥーリ首長家の末娘です。先日から逃避行を続けています。もう二〇日以上になります。
父、オリヴェル・
優しい父でした。優しい
私が一〇〇歳の子供だったころに、父は
宇宙船に用意された一室で、私はいまこの手記を書いています。この胸に燃えさかる怒りと憎しみを忘れないよう、文字として
何かを叩くような音がして、私は目が覚めました。
どうやら少し眠ってしまったようです。それがノックの音だと気づいた私は、書きかけの手記を閉じて、ドアに近づきます。
ドアを開けると、次兄のリクハルドお兄さまがあわてたご様子でそこに立っていました。
「セラ、敵に見つかってしまった。お前だけでも逃げてくれないか」
「そ、そんなこと……いったいどうしたと言うのですか?」
私はお兄さまに
「私がこの宇宙船で敵を引きつける。その前に
「
「ダメだ。エネルギーの充填が間に合わない」
「でしたらお兄さまもご一緒に。私だけ逃げるなんてことはできません」
「父と兄が亡くなったいま、ラトゥーリ家の当主は私だ。当主がここを離れるわけにはいかない」
「なら、私も一緒に戦います。私もラトゥーリ家の人間です」
「お前まで死んでしまったら、ラトゥーリ家の血が失われてしまう」
「ですが、お兄さ――」
「すまないセラ、時間がない。
リクハルドお兄さまのその声と、どちらが先だったのでしょうか。お腹のあたりに何かを押しつけられたかと思うと、パシュッという音がして……
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