第3章 森人族の乙女
第015話 連 絡(クリミナル)
「――なあ、マルガ。俺を訪ねて
「いいえ。そもそもそのような規則はございませんから、ご主人様に
鏡面仕上の丸い金属トレイを胸の前で抱えているマルガが
それをマルガも尊重してくれているようで、先回りして
「
「そうか。わかった」
ユグドとラシルに名前をつけたせいで、この宇宙船の
「……それで――」
「ん?」
マルガが、半分目を閉じたような表情で俺を見つめてくる。
「その人間というのは、
俺の思考を読んでいるなら、
「
「……ああ」
どうやら俺の口から言わせたかったらしい。
答えた瞬間、マルガの胸元でぺこっという音がした。金属トレイがくの字に曲がっていた。どうしたマルガ? いくら
マルガは曲がったトレイを両手の親指でくっと直し、
「ご主人様に敵対する者でなければ、
俺がテーブルの上に置いたカップをトレイに載せ、マルガはそそくさと部屋から出ていった。まだ少し、残っていたんだけどな。
《システム》が造りだしたAI
部屋の中央にあったベッドは、入口とは反対側の壁際に移動され、
医療用の器具は片づけられたが、ルームランナーやレッグプレスといった身体の慣らし運転のために使った器具は、今もそのまま置かれている。いつの間にやらフィットネスバイクやベンチプレスまで用意され、いまではちょっとしたスポーツジムのようになっていた。
それらは遥か昔に光の
ユグド=ラシルとの会話を終え、「とりあえずは宇宙船のエネルギー補給」という今後の方針を決めた俺は、自分の
「……生きていてよかった」
とも言われた。
声が震えていたのは、たぶんこみあげる怒りのせいなのだろう。
居場所を伝えると、かなり
大尉と会うにしても、いったい
自身の目で確かめてもらったほうが早い。
俺があの日歩いた長い廊下も、本当なら歩く必要のない
ラースガルドに必要な
「他国の領土に勝手に
ユグド=ラシルを前にして
『『背に腹は変えられません!』』
と胸をはった。自信満々の顔をして言わないでくれ。
もっとも小惑星リューデニアには大気がない。くわえて、短径一万五千光秒、長径七万五千光秒という長楕円軌道を描く惑星であり、恒星ヴルームを一周するだけで八〇〇年以上かかることから、資源惑星としても利用されていないらしい。さいわいなことに、現在、リューデニアはほぼ遠日点にあるらしく、レゴラス国の警備隊に見つかるのは、地上を散歩していて隕石にあたるくらいの確率だという。
あまりフラグはたてないでほしい。
こっちには失敗続きのマルガがいるんだぞ。マルガ、そんなに睨むんじゃない。
三日前にヴァンタム星系を離れ、現在位置から小惑星リューデニアまでの距離は約二〇〇光年。通常航行中にエネルギーを充填しての
レゴラス……何か大事なことを忘れているような気もするが、きっと気のせいだろう。
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