第014話 大 樹(ツウィンズ)
突然、
光体はしだいに形を変えて膨張し、人のような姿になっていく。光がおさまると、目前に二人の少女がたっていた。
『『ようこそお越しくださいました。アーシェス・
二人の少女が口を
見た目の年齢は――
『『このたびは、そこにいる
二人揃って頭をさげる。わかった。それで君たちは?
『『私たちは《システム》が造りだしたAI
そこで、隣にいたマルガがわざとらしく
「
『『そ、そうでしたね。気をつけます、
「マ、ル、ガ、です」
二人の少女は、意地でもマルガの名前を口にしたくないようだった。
変な名前だったのかな? それに二人もいるのは
『『初めて造りだしたAI
二人ともがお互いを指さした。いや、どちらが予備だろうと俺はいっこうにかまわないぞ。
気を利かせたマルガが、全員を近くのパーゴラに案内した。白いパーゴラの下には、同じように白い丸テーブルと丸イスがあり、俺たちはそこに腰かけた。といってもAI
俺は少女たちの顔をゆっくりと見やってから、この宇宙船――ラースガルトについて
少女たちの回答は、俺の想像のはるか斜め上をいっていた。
『『……昔、この宇宙船には、《光の
光の
太古の昔に栄えたという、《パルヴァドール文明》だか《パールバディー文明》だかいう文明を築いた種族だ。神話の世界のお話だと思ったけど、どうやら違うようだ。
彼女たちの話によれば、光の
では、その
『『数千年前、
「もう一体は?」
『『レーン様のお母さまです』』
…………?
『『《マーリア・レーンXY46聖母型
母親が
だけど、
「はい。
『『
……よくわからなくなってきた。
母親が人間じゃなくて
『『レーン様は、間違いなく人間です。
「いや、それはいい。やるだけ無駄だ。だけど、母親は一五年前に死んだんだぞ?」
「おそらくはエネルギー切れかと思います。充電すれば、再稼働が可能です」
『『お母さまの身体は今どこにあるのですか?』』
「……ケルンの墓の下だ。棺桶に入って埋まっている」
「では、掘り――」
「それ以上言うな!」
思わず声が大きくなってしまった。母親が
「……申し訳ございません」
「いや、こっちも大声を出して悪かった。この件についてはしばらく時間をくれ」
「わかりました」
マルガがすっと席をはずした。
居づらくなったのかと思ったが、どこからかコーヒーを運んできた。どこかに自動販売機でもあるのか? まあ、そんなことはどうでもいいか。
『『あ、あの……レーン様』』
「なんだ?」
『『その……今後のことについてなんですが、レーン様にお願いがございます』』
「エネルギー不足の件か?」
俺の言葉を聞いて、少女たちは驚いたような顔をした。
『『は、はい。どうしてわかったんですか?』』
「なんとなくだ。マルガの話じゃ、人手不足のせいで入手不可能らしいからな。エネルギーは補給したいけど、マルガはここから離れられない。他に稼働している
『『マルガのせいです!』』
「は? お前、まだ何かやらかしていたのか?」
俺は呆れてマルガを見た。
「いいえ、違います。そうではありません。ご主人様をお捜しするために、その……ラースガルトを乗り回してしまったのが原因です」
やらかしているじゃないか。
「ですが、その結果、ご主人様をここにお迎えできたのです。不可抗力です。
思わずため息が出た。
「で、どうすればエネルギーが補給できるんだ? 人手不足で動ける人間がいないから、俺をこの宇宙船に連れてきたんだろう?」
『『はい。ですが、動ける人間なら誰でもよかったわけじゃありません。ここに
わかった。わかったから、はやく説明しろ。
『『ラースガルトを動かすためのエネルギーは、宇宙空間に無限に存在します。
「
「
よし、じゃあ、そこに行こう。掘削機とか小型宇宙船とかの用意もできているんだろう?
「もちろんでございます、ご主人様。
お前が言うなと思ったが、ツッコんだら負けだ。
その星系までラースガルトで行って、そこからは小型宇宙船を使う。作業は俺ひとりでしなくてはいけないが、まあ、なんとかなるだろう。
『『あ、あの……レーン様』』
「なんだ?」
ん? さっきも同じようなやりとりとしたような気もするけど、まだ何かあるのか?
『『私たちにも、名前をつけていただけませんか? マルガだけなんて不公平です!』』
マルガの名前を呼びたくなさそうにしていた原因はそれか。だけど、君たちの所有権までは
『『だ、大丈夫です。大丈夫ですから、お願いします!』』
何度もしつこく
青いドレスを着ている子が《ユグド》、赤いドレスを着ている子が《ラシル》。二人あわせて《ユグド=ラシル》。
彼女らの実体が大樹だから、大昔の
……この日、ラースガルトの所有権が俺に書き換えられた。
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