第011話 失 敗(ミステイク)
「レーン様の
メイド服の女性が提案してきた。
わかった、それでいい。何かメモをとるものがあったら、ありがたいな。説明が長くなるなら、質問することを忘れてしまいそうだ。
女性が中型の
試しに右手で文字を書いてみる。すらすら書ける。右手で文字を書くなんて、六か月ぶりだ。というか、俺はどのくらいここにいるんだ?
「『
「……そうか」
アイリーンⅣを出港してから、ちょうど二週間か。あ、だんだん思い出してきたぞ。俺はあのときモビィ・ディックに激突したんだった。
「その件に関しましては一〇〇パーセント、いいえ、一〇〇〇パーセント
メイド服の女性は、またしても深々と頭を下げた。わかった。わかったから、状況を説明してくれる?
「では、お
……そこからなのか?
「
さっきもミスしたって言わなかったっけ? まあ、いいか。続けて。
「
もしかして《
「その通りでございます。レーン様のことが、連日のようにニュースで報道されておりました。身の危険を
これはツッコんだら負けなのか。
「はい。突っ込むのは
さっきからここ、ここって鶏のように言っているけど、結局ここは
「こことは、都市宇宙船『ラースガルト』のことでございます。
なるほど、ここはモビィ・ディックの中なのか。
「ひとつのご質問にお答えするのに、六ページも費やしてしまいました。とんだ無駄遣いです。いいえ、何でもございません。こちらのお話です。さて、ここにお迎えするよう《システム》からご下命があったとはいえ、さきほども申し上げましたように現在稼働中の
メイド服の女性が口ごもる。うん、それに失敗したんだね。いいよ、怒らないから続けて。それとも、ちょっと休憩しようか?
「いいえ、
エネルギー切れか。ハッチを開けるのを忘れていたのかと思った。
「忘れるなど、とんでもないことでございます。ハッチが開かないなどという報告は
受けていたのね。というか事前に点検しようよ。
「申し訳ございません、三〇〇年ほど前に報告を受けておりました。
ちょっと待ってくれ、俺の肉片って……。
「ご安心ください。この宇宙船にある
俺はいちど死んだのか。なんかショックだな。
「そうではございません、レーン様。死んだという解釈は間違いです。細胞レベルではちゃんとご存命でした。そうでなければ、右手を再生することも不可能でした」
なんとなく
そうか。俺の右手が義手じゃなくなったのも、胸の
「あの……いま、なんと
それまで無表情だったメイド服の女性の顔が、軽くひきつっているようにも見える。
「ん? 胸の傷痕のことか?」
「いいえ、そこではありません」
「ああ、右手ね。俺、もとから右手はなかったんだ」
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