16:元の体

 自らの『元の体』。


 それをアザリアが見つけ出すのは、自由の身となった今では難しいことでは無かった。

 日に何度もメリルは屋敷の外に出かけていたのだが、その後を辿ればすぐだったのだ。


 屋敷の裏の森、その中にある離れと思わしき一軒だ。

 窓はカーテンで仕切られていたが、天井の明かり窓から内部はうかがえる。

 そうして見つけたのだ。

 瀟洒しょうしゃなベッドの上にである。

 自分がいた。

 普段鏡越しにしか目の当たりにしたことがない自分が、そこに静かに寝かされていた。


 見下ろしつつ実感する。

 寝かされている彼女は間違いなく自分自身であること。

 そして、この距離、視界に収めている状態であれば──きっと、いつでも戻ることが出来ること。


 ただ……そのつもりにはなれなかった。


 『元の体』から目を離し、アザリアはすぐにその場を飛び立った。


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