第14話 帝都の新聞

 ララと騎士たちはホールに集まり、騎士が入手した新聞を見た。

 帝都で発行されたものらしい。2日前の発行だ。


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 ララ皇女、訪問先のエルドランド王国で襲われ行方不明に!

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 見出しには、そう書かれている。

 詳細を読み進めララは嬉しそうに微笑んだ。

「やはり、叔父様は悪い人ではないわ」



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 ララ皇女が襲われたと知り、体調のすぐれない皇帝に代わり、マルタン公爵はただちに追撃隊を編成し現場に向かわせた。

 また公爵令息が指揮をとり、ララ皇女の行方を探すべく調査を開始している。


 信頼できる側近の話だと、二人はララ皇女を心配し夜も眠らず指揮を執っていると言う。騎士たちも公爵閣下の指揮の元、士気を高くして捜査に当たっているとのこと。


 エルドランド王国のアーロン王子の協力も得て、現在、エルドランド王国とサルドバルドの街をくまなく探している。

 この勢いなら、すぐにララ皇女を見つけ出し救出できるはずと、皇帝の側近は我々の質問に答えた。

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「おふたりは、私をとても心配してくださっているわ」

 ララは安心したように言う。

「この記事を見ると、そのようですね」

 ミドルバも頷く。エイドリアンは二人の様子を見てため息をつく。


「我々の送った要求については何も書かれていないな」

 ミドルバは何度も新聞の字を追いかけて確認しながら言う。


「そうですね、まだ公にはなっていないようです」

「もしかして、無視するつもりなのでは?」

 トムが心配そうに言う。


「娘が死んでも平気ってことか?」

 エイドリアンが言う。

「お父様は体調がすぐれないって書いているでしょ! 変な事言わないで!」

 ララは、エイドリアンに怒る。それからミドルバを見た。


「それよりお父様が心配です。ミドルバ、もういい加減、私を帰らせてくれませんか?」

「出来るわけないだろう」

 答えたのはエイドリアンだ。


「皇帝には帝位を退き、帝位をあんたに譲ってもらう。それまでは帰せない」


「まだそんなことを言うのですか? お父様は悪い人間ではありません!」


「よく考えろ! なにひとつ解決していないのに終わりに出来るはずないだろう。税金も、獣人狩りも何も変わらない」


 その言葉に、一瞬ララは言葉を失うが、すぐ持ち直す。


「その件については私が何とかします」

 ララがそう言うと、エイドリアンが首をかしげる。

「何とか?」


「私が戻ったら、お父様に必ず改善をお願いします」

 ララの言葉にエイドリアンは少し考える顔をする。


「もちろん、あなた方の事は、私を暗殺者から守ってくれた人達だと説明するわ。もともと何もなかったことにすればいいのよ」

 ララはエイドリアンが黙ったので可能性があると思い、なんとか解放の方向に持って行けないかと言葉を重ねた。


「無かった事って……すでに脅迫を送ったのに?」

 エイドリアンが言う。

「脅迫状は誰に送ったの?」

「皇帝への親書として送った」

「なら見ている人は限定されるから、ごまかせるわ。それも私がなんとかします!」


 エイドリアンとミドルバが顔を見合わせた。

「どう思う?」

 エイドリアンがミドルバに訊く。


「私はララ皇女の事は信用しています。大聖女の血を受け継ぐ人だ。しかし他の皇族は信用していない」

 ミドルバが言う。

「ララ皇女、やはり、今あなたを宮殿に帰すことは出来ません。もうしばらくお付き合いください」

「そんな」

 ララは落胆する。


「しかし、本当にこの記事の通りだったら、かなり大規模な捜索をしているようですね」

 トムが言うと、みな再び新聞に目をやった。


「うむ、記事によると、エルドランドからサルドバルドへの通り道にある村と、エルドランドからケールへ抜ける場合のコースを捜索すると書いてある、念の為、注意しておく必要があるな」

 ミドルバの言葉に、みな頷いた。


 この時、新聞の片隅に小さく書かれたある記事を彼らは皆見逃していた。


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 帝位継承権第2位の前皇帝の弟、アーノルド殿下死去

 アーノルド殿下は78歳。高齢の為の老衰との事。

 1週間前に死亡していたが、ご家族の都合で発表を控えていたという事です。

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