第2話 インフレって何。
コメントなどをもらいつつ、考えた結果、以下となった。
労働人口の減少が、日本の衰退(=経済規模の縮小)の主要な要因と考えられる。なので、これは不可避であると。よって、恐らく日銀が言っているのは、『拡大無しの、ただのインフレ(通貨下落)』であると。
これを少し説明すると以下になる。
通常、物価と賃金が両方上がる状況というときに、まず思い浮かべるのは、経済成長(=経済規模の拡大)であると想う。例えば、日本でも戦後復興期からバブル崩壊までは、これに該当する。物価も上がったし、賃金も上がった。条件さえ整えば、格別、珍しいことでも難しいことでもない。
しかし、労働人口が減っている状況では、相当に無理がある。さらに言えば、経済復興期には消費税は無かった。(厳密にいえば、バブル崩壊直前に導入されているのだが。それでも3%である)つまり、現在の日本は、経済成長(=国全体での経済規模の拡大)を望める時代では無いのである。いくら、日銀でも、これを無視してはいないだろうと。
(補足1.もちろん、特定の分野が成長するということはある。しかし、それは政府の仕事であるし、そもそも日銀のなすマクロ政策でどうにかできるものではない。
2.消費税タイプの税制が、産業成長にマイナスというのは、タバコ税を考えると分かりやすい)
では、日銀が言っていると想われる『拡大無しの、ただのインフレ(通貨下落)』とは何か。
ところで、まさに私たちは、その『拡大無しの、ただのインフレ(通貨下落)』の状況下にある。日銀は、デフレはダメなんだ。インフレこそ望ましいんだ、と言って来た。でも、今の方が厳しくない、と皆さんは想わないだろうか。それに、今の状況で賃金は上がるのか?というと、更に首をかしげざるを得ない。ここで言っているのは、当然、統計データの実質賃金である。僕の給料、上がりました。はいはい、おめでとうございます。でも、それを議論しているわけじゃないのだよ。
原材料費の上昇を企業は製品価格に転嫁する。そこに賃金も上げるなら、更に製品価格を上げるか、内部留保を吐き出す必要がある。どちらも、企業が喜び勇んでやる話では無いと想う。つまり、物価高によるインフレ状況というのは、(賃金上昇も伴うことが望ましいとする)日銀が言っているインフレではないと考えられるのである。
それでは、どのようなインフレを日銀は想定しているのか。
実は、日本がインフレじゃないのと、そもそも想ったのは、現今の日経平均である。
もちろん、これは将来的に(米国の利下げにより)日米の金利差が縮まると見込まれるので、必然的に円高に向かうと予想される。それゆえ、もし株価が下がったとしても、外国の投資家にとっては(つまり、ドル・ベースでは)、日本の株式市場は、損の発生しにくい、安全な投資先と考えられる。
一応、このように説明できる。
でも、インフレ――円の通貨下落――としても説明できる。つまり、株価が上がっているのではなく、(対ドルで)通貨下落しているのだよ、とも。
そして、このインフレとは何かといえば、物価が上がって――現下の日本を例に取れば、原材料が上がって――のインフレでは無いのである。上で示した如く対ドルでのインフレである。
確かに円安基調の現在、輸出企業の多くは(円ベースでは)利益が増えた。それが社員に賃金上昇として還元されたかどうかは各企業それぞれに異なろうが、ただ、輸出に関係ない企業よりは、賃金上昇はあり得るだろう。
労働人口が先細りする――これは、消費規模が縮小するのと同義である――日本は見限り、世界をターゲットにすると。世界の基軸通貨といえば、ドルである。つまり、ドルに対してのインフレが日銀の目標と考えれば、はいはい、分かりましたとなる。そして、自国の通貨安誘導は、当然、他国からの批判を招くので、これを声高にいうことはできない。
まあ、これだと、輸出関連の企業の賃金は上がる可能性が高いから、賃金上昇を伴うインフレというのも、言って言えないことはない。ただ、これも、大きな声じゃあ、言えないだろうけどね。
なるほどね、という訳である。
今の日本ってインフレ型の不況じゃないの? ひとしずくの鯨 @hitoshizukunokon
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