実力主義の世界で

咲夜

第1話 実力主義の入学試験

「レイ?どうかした?」


学校からの帰り道幼なじみのミリアからそう声を掛けられた


「いや何でもない少しぼーっとしていただけだ」


「そう?今日のレイは少し変だよ?」

彼女は少し心配そうに聞く。


「少し疲れているかもしれないな」


「確かに最近の授業忙しいもんね…」


「そうだな…そろそろ進学の時期で周りもギラついてるからな…」


この世界は残酷な程の実力主義の世界。

実力が無いとそれはもう酷い扱いを受ける。


なのでただでさえ模擬戦やレベルの高い授業で忙しいのだが今は進学のシーズンという事もあり周りがかなり殺気立っている。


「やっぱミリアは上を目指すのか?」


「そうねぇ…やっぱり実力があるに越したことはないから目指したいわね」

そう悔しそうに呟く。


もし実力の高い学校に進学出来れば最低でもそこそこの生活が保証される。


もしトップの学園なんかに進学出来れば、それこそ将来が約束され不自由することが無くなる程だ。


「いいと思うぞミリアならこのままいけばトップの学園にも入れるんじゃないか?」


「でも最近みんなが順位上げてきたからあまり楽観視できないわね…」


もしトップの学園に行くには、全国で実力上位100名にはいる必要がある。


そして俺たちの通っている学校は、そこそこ実力のある学校でここでは上位3名程毎年し進学出来ている。


つまり最低でも学年3位…


それは、とんでもないレベルで、他国の訓練された武装した軍人2人を、素手で楽に勝てるほどの強さだ。


そう聞くと無謀にも思えるが、ただミリアは才能がある。


ただ彼女は強い、基礎がしっかりしている。

そして学年の中でも能力無しであればトップ、能力ありでも3位以内に入れる程の強さだ。


おそらく合格だけなら大丈夫だろう。


それに今は進学シーズンと言ってももう入学試験手前、なんなら明後日、だから逆転の可能性も限りなく低い。


「まぁそんなに気にしなくてもいいだろう?

それより明日しっかり休んで明後日に備えようぜ。ミリアなら大丈夫だ」


「ふふ…ありがとうお互い頑張ろうね」


「あぁ…明日は休みだから明後日試験場で会おうぜ」


「そうね!また明後日!」


そう言って俺たちは別れた。

そして俺は明後日までしっかり休み…


――――――――――――――――――


そして当日


俺はミリアと一緒に試験場と書かれだ場所に到着していた。


ここにはざっと200人程の受験生が集まっていた。


他にも試験官と思われる人物がいた。

その試験管は時計を見るなり叫んだ。


「ふむ…時間だな…私は試験官のアリアだ!今からお前達を試験会場に連れていく!しかしその前に持ち物を検査する連絡が取れる物は持ち込み禁止だ」


いきなりそう言うと、持ち物検査が始まり試験者に動揺が走る。


この世界じゃ何が起こるか分からない。


実力が高いものは何をしてもいい…

そう言う価値観のせいで命に関わる事件が起こる事もある。

頻度は多くは無いもののそんな中で連絡手段が無くなるのだ。


焦るのも当然だろう。


ミリアにも少し動揺が見られた。

「レイ持ち物検査のこと聞いてた?ちょっと不安だよ…」


「いや聞いてないな…だがまぁこの世界トップの学園だ…そうおかしな事は起こらないとは思うぞ?」


「それもそうね…」


この学園には全国でもトップクラスの実力の人間だけが通う事を許される学校。

そんな生徒を指導する教師も人外レベルだ。


もしそんな所に喧嘩を売れば命がいくらあっても足りないだろう。



そんな風に思っていると検査が終わる。



その後


「今から試験会場に連れていくがその前にもう1つ、今からグループに別れてもらう、メンバーは既にこちらで4人1組のグループを先に分けて置いたので今からそれに従ってくれ!」



その言葉を聞くなり俺達は、分けられたグループが書かれた紙を確認する。


「レイ!見てこれ!一緒のグループ見たいよ?!」


「そうだな…何とかなりそうだな!」


そこにはグループメンバの名前とそのグループの集合場所が書かれていた。

それによると、どうやら俺とミリアは一緒のグループになったらしい。


よく知っているミリアと一緒なのは好都合、色々と行動しやすい。




後は他2人がやりやすそうな奴なら最高だ。


俺達はは残り二人と思われる人間と合流するために指定された場所まで歩く。


すると2人の人影そこにはあった。


向こうもこちらに気づいたようでゆっくりと近付いてくる。


ある程度近付くと、ガタイのいい、茶髪の真面目そうな男が挨拶をする。


「はじめまして、俺はルークだよろしく!」


それに続いてもう1人の、気の弱そうな小柄な銀髪の女の子が。


「わ、私はアリスと言います…」

自己紹介をしてくれた。


それに合わせて俺達も挨拶をする。


「レイだよろしく!」


「私はミリアよろしくね!」


そうしていると絶妙なタイミングで試験官が叫ぶ。


「どうやら無事チーム分けできたようだな!それではこれから船に乗ってもらう!」


どうやら俺たちは船でどこかに連れていかれるらしい…


周りを見てみると、いきなり予想外の事が続いたせいか顔色が優れない。


まあ仕方ないだろう。


「とりあえず指示に従おうか…」


ルークのその言葉に俺達は頷き船に乗り込んだ。


そうして乗り込むと、俺たちはそれぞれの部屋に案内された。


どうやら1人一室使えるらしく他の部屋もここと同じような感じらしい…


「あ、あー、お前達聞こえるか?試験官のアリアだ。


今はとある島に向かっているがその間に5日間ほど時間がある。


その間はこの船で生活してもらう、必要な物があれば部屋にある電話で教えてくれ!また食事の場所等は部屋にあるマニュアルで確認してくれ!以上だ」


「とりあえず部屋にある物の確認するか…」


そんなこんなで探索すると幾つか出てきたものがあった。


1つが食事の場所や時間等のここでの生活のタイムテーブル


そして5日分の衣類、応急セット、そして一通の封筒があった…


俺はその封筒を開封する。


「これか…」


そこには今回のチームの中に1人学園側の内通者が居るというものだった…


その内通者は刃の代わりに血糊が付いたナイフや、飲むと次の日体調を崩す程度の毒を持たされているらしく目的地に着くまでに、内通者が試験者に毒を盛るもしくはそのナイフで切られると失格。


逆に内通者を見つけ部屋の電話から密告するか内通者本人を拘束すれば、残った試験者はこの試験を通過できるらしい…


どうやら試験は既に始まっているらしい。


ただこれを見るに内通者も試験者の1人ということだろうな…


そうじゃないと全員顔見知りの同じ学校出身の受験者場合は内通者を入り込ませるのが難しい。


また、学園側の人間を潜り込ませるには一番最初の試験としては効率が悪すぎる。


「まぁ気ままにやるか」


俺はそう呟きながら策を考えるのだった。

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実力主義の世界で 咲夜 @utakazen

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